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特別展 聖徳太子1400年遠忌記念「聖徳太子と法隆寺」 [寺社・城・仏像・ミュージアム]

東京国立博物館



トーハク本館で開催されている特別展「国宝 聖林寺十一面観音」を見終えて、平成館に移動した。


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館内が混雑する程の人が集まれば、当日券は買えなかったと思うが、台風で天気が悪いのと、コロナで緊急事態宣言下なのと、チケットがネットを介した予約制だったりが影響したのか、最近はトラウマになっていた劇混雑は無かった。

空いていたので全ての展示を案内をゆっくり読んで、ケースの真正面を独占して鑑賞できた…こんなの滅多に無い。

平日なのでサラリーマンは居なくて、美しいモノ好きな女性と、後は夏休みの大学生が目に付いた。

やはり法隆寺とかその隣にある藤ノ木古墳となれば、「日本」という国号が定められた大宝律令の成立前の推古朝の歴史ミステリーと浪漫に溢れた古代史好きにはど真ん中の聖地で、俺も最も数多く参拝した寺だ。


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この特別展は奈良の国立博物館から上野へ移動してきたんだけど、奈良の方は人気の「夢違観音」や「玉虫厨子」も登場していたが、どちらも上野には来なかったが、夢違観音や玉虫厨子は法隆寺の大宝蔵院でも至近距離からじっくり見れる…ただ法隆寺は山手線でスッと行けるトーハクと違って観光客には交通の便が悪いのが難点。

あと奈良・東京共開催期間の前期と後期で一部の展示が入れ替わるので要注意。


特別展に入って、出迎えてくれたのは飛鳥仏の微笑みだった。

鞍作止利仏師の作風に通じる面長の顔に見開いた目とほほえみが印象的な菩薩立像は、飛鳥仏なのにまだ綺麗に金箔が残っている奇跡的な状態の良さで、さすが法隆寺だと唸った。

法隆寺に行っても中に入れない聖霊院の秘仏本尊である聖徳太子および侍者像が良かった。

写真では知っていたが実物が見たかった…山背大兄王が漫画みたいな可愛さで、コロナ窶れの心がかなりホッコリした。

そして今回のメインは「奇跡の空間」と呼ばれる西院伽藍の金堂。

まずは日本最古の四天王。

今回は広目天と多聞天が来ていた。

後ろに回って驚いたが、約1500年間踏みつけられている邪鬼だけど、俺は土下座の様に正座した状態で前屈していると思っていたが、両足で踏ん張った状態で踏みつぶされていた…これは苦しい姿勢だ。

ペシャンコに踏まれているので両足は180度外側に開いて、ワニの足みたいな状態で踏ん張っていた。

安倍や麻生なんかは死後にこれをお釈迦様が降臨するまでの56億7千万年間やらされるのかと思うと少し気の毒になった。

「伝橘夫人念持仏厨子」も斑鳩からはるばる上野に来ていた。

「伝橘夫人念持仏厨子」とその中に入っている「阿弥陀三尊像」は現在は大宝蔵院にあるが、元は金堂の釈迦三尊の並びの反対側に玉虫厨子と並べられていた。

そして金堂の薬師如来坐像を間近に見た。

これは法隆寺で拝観しようとしても殆ど見えない。

最近の金堂はLED照明で昔より少し明るくなったが、遠くにあるのでよく判らない。

見るスペースも少なくて小さく、立ちはだかる巨大な外国人旅行者の隙間から頑張って見ようとしてもひっきりなしに駆け足で入ってくる修学旅行生によって集中力がかき消されてしまう難所中の難所にある。

一度生きている間に間近で見たいと思っていたが、念願が叶った。

金堂の本尊は飛鳥寺の飛鳥大仏で有名な止利仏師作の釈迦三尊像だけど、東の間の本尊は薬師如来坐像。

この像が謎なのは、光背に書かれた銘文で「推古天皇と聖徳太子が607年に像と寺を完成した」と記述されているが、日本書紀に法隆寺が670年に全焼したと書かれているので、法隆寺の伽藍は火災後に再建されたものという再建論と、日本書紀の記載は信用できないとする非再建論争が起きた。

その後発掘調査で火災後に再建された事が判明しているが、それでも今の金堂は693年には完成している。

すると、薬師如来坐像の光背銘に607年と書かれていると言うことは火災前の若草伽藍からあった像なのか?となってくるが日本の薬師如来信仰が始まるのはもっと後になる。

また、金堂の中央に安置される釈迦三尊像の光背銘には「623年に聖徳太子の冥福のため止利が造った」と書かれているので、これより古い薬師如来像が「東の間」に安置されて脇仏のような扱いをされているのもオカシイ。

そして決定的なのは仏像の真上に金堂の天井からつるされている天蓋が、釈迦三尊像のは白鳳時代のものだが、薬師如来坐像の方は後で釘で取り付けられている鎌倉時代のものである事が判っている。

誰も後ろ側に行かないが、薬師如来坐像の後ろに回って光背銘を確認してみた。

読めなかったが、確かに文字が刻まれていた!これはトーハクでしか出来ない。

でも少しだけ法隆寺の謎に触れられた気がして嬉しかった。

大満足で会場を出て、超分厚くて重い立派な図録と薬師如来坐像のフィギアを買った。


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ちゃんと光背銘が書かれていた。


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俺は最近も腰を痛めたりで、かなり身体にガタが来ているので薬師如来を我が家のご本尊にしてみた。

我が家の須弥壇も次第に雰囲気が出てきた気がする。


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因みに左から、東大寺公認フィギアの月光菩薩、トーハク特別展「運慶」で販売された龍燈鬼像、薬師如来坐像、トーハク特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」で発売された帝釈天騎象像、右端は東大寺公認フィギアの誕生釈迦仏立像。


トーハクを出てJR上野駅に向かうと、かなり改修されていて驚いた。

もう横断歩道での信号待ちは無くなり、道路手前に駅入り口が出来ていた。


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一体いつの間に?と驚いたが、それだけコロナで上野から足が遠のいていた。

蒸し暑い中2つの特別展をハシゴして2冊の図録が重いにもかかわらず、疲れていないことに気がついた。


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やはり最大の問題は人混みだったと思う。

空いているトーハクは最高なのだ。