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涼しくなる話8 [不思議]

冷たい風



あらずじ:初期MargeLitchが埼玉県某所でデモテープのレコーディングを行っていると、次々と怪奇な現象が起き始める。

前回からの続き)



ドラムとベースを録り終えたベースのKyoとドラムのマコトは、ドラム録音のために借りていたマイクを返しに機材車に乗って東京に戻り、部屋の中は俺1人だけになってしまった。

俺は自分の録音の時は1人の方が集中できるので、誰もいなくなるのは好都合だった。

東京に戻ったメンバーは翌日仕事に出た後に戻ってくるので、それまでの24時間でギター録音を終える計画だった。

メンバー達と別れてから1人でギター録音に没頭していたが、季節は秋でまだ寒い時期では無いはずなんだけど部屋が異常に寒かった・・・余りにも寒いので部屋の奥に放置されていた電気ストーブを3台付けていたが追いつかなかった。

普通ならブレーカーが落ちると思うが、作業場用の電力なので問題なかった。

寒いのを我慢して作業を続けていたが、一旦録音を中断して防寒対策をする事にした。

部屋の中を冷たい風が吹いているのに気がついた。

寒さの原因はこれか!と、俺はタバコの煙を頼りに風が吹き込んでいる箇所を探した。

風が入ってくる隙間を塞ごうとガムテープを持って風の出所を探したが、プレハブ小屋とはいえプロの大工さんが建てただけあって、そんな隙間は何処にも無かった。

驚いたのは、風でタバコの煙が横にスーッと流れていくのを辿っていくと、ある所で煙りは真上に上がり・・・そこは無風だった。

タバコの位置を少し戻すと再び煙は勢いよくスーッと流れ、その間は「何もない空間」だった。

俺は風対策を諦めて3台の電気ストーブを極力近づけて再びギター録音を再開したが・・・俺が風の出所を探した頃から「誰かに見られている」感覚が出てきた。

「視線を感じる」の強烈版で、見えないナニモノかが俺の目の前にいてジーッと見られている感覚が常時し続けた。

そして、外で何者かが歩き回る足音が聞こえた・・・動物では無く、人間の足音だった。

小屋の入り口の反対側は外塀と小屋の間に人が歩けるほどの間隔は無いはずなんだけど、そこを枯れ草を踏みしめて歩くザッザッという音が移動していた。

聞き耳を立てると微かに複数の人間の話し声も聞こえるんだけど、何を話しているのかは聞き取れなかった・・・聞き取れなくても単語の欠片くらいは聞こえそうなものなんだけど、まるで外国の言葉の様に一言も聞き取れなかった。

それでも録音を中断するわけにはいかないので、俺はギターを弾き続けた。


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同じ部屋の中でギターアンプから音がガンガン出ているので、何者かが部屋の中にいても「音で察知」出来ないのが怖かった。

つづくのだ。