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涼しくなる話9 [不思議]

足音




あらずじ:初期MargeLitchが埼玉県某所でデモテープのレコーディングを行っていると、次々と怪奇な現象が起き始める。

前回からの続き)

テープチェンジで巻き戻し終えた時のカウンターの表示が「666」だったり、部屋は相変わらず氷のように冷たい風が吹き荒れ、何者かが部屋の周囲を歩き回り、目の前で誰かに見られる視線を振り払ってギターを弾いていると、窓の外が白々と明るくなってきた。

朝が来て外が明るくなると、ピタッと冷たい風と外を歩き回る足音が止み、視線も感じなくなった。

急にスーッと楽になった。

すると突然凄まじい睡魔が襲ってきて、俺はマネージャーが実家から持ってきてくれた布団に前のめりに崩れ落ちた。

目が覚めてから再び録音を再開し、夜になってメンバーが東京から戻ってきた頃にはギターの収録は全て終わっていた。

ホカ弁を持ってきてくれたマネージャーが帰り、俺たちはトラックダウンに備え夜中まで録音した音のチェックをしていた。

区切りの良いところで休憩しようという事になり、俺は昨夜起きた奇妙な出来事をメンバーに詳しく伝えた。

メンバーは聞きたくないオーラ全開だったが、俺が厄介な状況で寝ずに録音している時に東京の自宅で温々と寝ていたんだから、これはもうなんとしても聞いて頂かないと不公平だと思った。

「この辺りで風が無くなって・・・」とか、「足音がザッ!ザッ!として・・・」と、話が最高に盛り上がったとき、部屋の外で足音がした。

昨夜同様、枯れ草を踏みしめる足音が部屋の外を移動していたが・・・機材車を入れた後に作業場の入り口の大きな鉄の門は閉めているし、誰かが勝手に入り込んで歩き回っているとしても意味がわからなかった。

真っ青になったKyoとマコトは「あ!今そっち!」とか小声で言いながら足音を追いかけていたが、スッカリ慣れてしまっている俺は「昨夜の出来事の詳細な説明」を続けた・・・。

その後も些細なアクシデントはあったもののデモテープは無事完成し、俺たちは楽器や機材を撤収して東京に戻った。


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その年の暮れも押し迫った12月の29日に埼玉のライブハウスでライブをやって、見に来てくれた仲間たちと打ち上げをやろうという事になったが、もう忘年会シーズンも終わっていて居酒屋などの店は全て閉店していて静まりかえっていた。

そこで木材加工場を思いだした。

「あそこなら騒いでも問題ない!」という事になり、嫌がるメンバーを尻目にプレハブ小屋で忘年会をやる事になった。

つづくのだ。