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怪談の記憶 [日々のあれこれ]

呑み仲間





元MargeLitchベーシストの七沢くんとは古い付き合いで、知り合ったのは1989年頃の目黒の鹿鳴館の楽屋だったと思う。

七沢くんは髪の毛を真っ逆さまに立てていて、青いFenderのミラーピックガードのプレベにハイワットの50ワットのベースアンプでスティーブ・ハリスって感じだった。

最近はコロナで会うのが減ったけど、呑み仲間として時々呑んでいる。

先日も阪神優勝祝いで池袋で会ったんだけど、話が昔の話になった。





どこからそういう話になったかは忘れたが、いつのまにかMargeLitchの「ファンタージェン制作時」の話題になった。

91年発売のCD「ファンタージェン」は、呪われているのかと思うほど様々な難関に直面した作品だった。

まず制作途中でメンバー脱退で抜けたパートを俺が弾いたり、完全自主制作だったのでメンバーで出し合った制作費を当時のマネージャーが持ち逃げしたり・・・そういう俺自身の頑張りではどうしようもない厄介な出来事が次々と襲いかかった。

その中でも極めつけが、アルバムのインナー・スリーヴのメンバー写真が原因不明の心霊写真になってしまう事件だった。

録音~トラックダウンまではMargeLitchの活動を停止し、全メンバーに作業を割り振って、俺は音源制作を担当していた。

今の様なDTMとかの便利なものが無い時代だったから、当時住んでいたマンションの部屋はミキサーやレコーダー、エフェクターなどの機材で溢れかえっている中で作業に没頭していると、インナー・スリーヴ制作担当の長倉くんから、当時はインターネットなんて無かったから電話が来た。

某新築のマンションの綺麗なロビーで、プロカメラマンさんが撮影したメンバー達の写真が使えないらしい・・・なんでも心霊写真みたいに写真がグニャグニャ歪んでいるらしい。

とりあえず取り直そうという事になって、完成したばかりの池袋のビックリガードで撮影した。

その後も俺は音源制作に忙しく、結局問題の写真は見ることは無かった・・・その後も何度か俺と長倉くんの間でその写真の話題が出たけど、何故か長倉くんは多くを語らなくて、その時は俺の写真だけが歪んでいたので言い辛いのか?と疑っていた。

で、七沢くんがその「写真の話」を語り出した。

それまでくつろいでいた俺が急に前のめりに真剣に話を聞き出した。

七沢くんは怖い話が超苦手で、俺の態度が変わっただけで声のトーンが落ちてしまった・・・それを切っ掛けに俺の怪談のスイッチが入るのを警戒したんだと思う。

俺はこの時まで、問題の写真を見た人は長倉くんだけだと思っていたが、七沢くんもその写真を見たらしい・・・どういう写真だった?と聞くと、長倉くん同様「グニャと歪んでいた」と、それ以上の詳しい解説は無かった。

七沢くんは、MargeLitchが演奏後に泊まった名古屋の宿での怪奇な出来事も覚えていた。

俺はもう忘れていたけど、七沢くんのおかげで色々と思いだしたのだ。