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新幹線の男 [日々のあれこれ]

出張サラリーマン[新幹線]


新幹線の男なんて書くと、最近「刑務所に入るのが夢だった」と、「殺すなら相手は誰でも良かった」と豪語し、無期懲役を勝ち取るために裁判で無反省を貫く狂人を連想する人が多いと思うが、そいつの事では無く、最近東海道新幹線ののぞみで大変な男を目撃した。

そいつに遭遇したのは、夕方京都から東京に帰る時だった。

やってきたのぞみの指定席に座ると、2つ前の通路を挟んだ反対側の一番通路側の座席に巨漢の若い男がいた。

凄まじく太っていて、のぞみの座席がギリギリな感じで、こんなのが隣だと大変だ。

そいつはテーブルの上に小さなノートPCを置き、PCのUSBからスマホへケーブルを刺して充電していた。

男は巨体を縮めて小さなパソコンを太い指を器用に使ってしきりにキーボードを叩いている。

退屈なので、ボーッとそれを見ているとエクセルとメーラーを激しく交互に使っている。

次から次へとひっきりなしにメールと添付ファイルが届いていて、5分おきに電話が掛かってくる。

男は電話が掛かってくると充電ケーブルを引き抜いて、話ながら車両連結部分に向かう…それを聞く限り、どうやら得意先とトラブルが起きているようで謝り続けている。

電話が終わると早足で座席に戻り、メールを確認すると…恐らく男の援護をする内容のメールが来ていて、添付された写真には書類の所々を赤線で囲った写真が添付されている。

男は額に脂汗をかきながら、巨大なお尻を座席にめり込ませると素早くスマホを充電しながらエクセルを開くと再び電話が鳴る…今度は仲間かの連絡らしく、刺したばかりの充電ケーブルを抜いて再び車両連結部分に向かいながら、送られてきたメールの説明を聞いている…こんな落ち着かない奴の隣に座った人は災難としか言いようがない。

秋の行楽ど真ん中ののぞみ号の中は、外国人観光客が目立ったが、それでも乗客の大半は出張サラリーマンで、俺が京都から乗り込んだ時は各列に1台はノートPCを弄る人がいたが、名古屋を超えるとパソコンの代わりに発泡酒とおつまみに変わっていた。

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静岡辺りからは寝る人が増えてきて、まだ仕事をしているのはデブだけだった。

とにかく10分おきにスマホを持って立ち上がり、席に戻ってはパソコンを叩いている。

やがて新横浜に到着するが、降りる乗客に混じってスマホで話している…どうやら上司からの電話らしく「やる気あるの?とか、言われちゃいまして…」と、嬉しそうに報告していた。

長い電話が終わって座席に戻った男は、アプリを終了させる手順に入ったらしく、USBメモリに保存しようとメールの添付資料とエクセルのファイルをコピーするんだけど、その量に驚いた…膨大なファイルらしくコピーに凄く時間が掛かっていた。

あと数分で東京駅に着くが、大丈夫なのか?と心配したけど、俺も降りる準備をしていると次々と出張サラリーマンが出口ドアに向かって通路に並び始めた。

俺もその列に加わろうと立ち上がると、デブはとっくに準備を終えて列の前の方に立っていた。

東京駅の人混みに消えていくデブを見ながら、奴は仕事のストレスで太ったのかもしれないなと思った。

ま、どんな仕事も大変なのだ。