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過去に見た未来の夢 [日々のあれこれ]

海底ハウス「歩号1世」[サーチ(調べる)]


江戸時代の船の模型などが展示されていた船の科学館の別館を出て、本館の裏の方に回ると、「歩号1世」という海底ハウスがあった。

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1968年、昭和43年に作られた、民間による世界最初の海底ハウスだそうだ。

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「歩号1世」は愛媛県のミカン園主が3年半がかりで完成させ、宇和島湾内で1週間の海底生活に成功している。

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続けて制作された「歩号二世」は静岡県沼津市の内浦湾、浦長浜の水族館「伊豆・三津シーパラダイス」の沖で、壁や天井といった上部は切り離して魚礁として利用されている。

1970年代には、人が海中生活をするというのが先進的科学文明というか、夢のある未来への憧れだったんだろうか…閉館して閑散とした船の科学館の横で、投げやりに野ざらしになっている奇妙な構造物を見た瞬間、俺は映画「猿の惑星」を思い出していた。

1970年当時の人からすれば現在の2020年前後の世界などは、遙かな未来の手塚治虫先生の「鉄腕アトム」の世界だろうから、21世紀の人類が海底に住むなんて当たり前に思えたんだろう…スタンリー・キューブリック監督も「歩号1世」が作られたのと同じ1968年の映画「2001年宇宙の旅」で、地球から宇宙ステーションへの定期便が往復していて、木星に有人探査ロケットを打ち上げる事を描いている。

しかし2019年の現実は1970年代の人々が想像した様な光り輝く未来なんかでは無かった。

むしろ明るく活気に満ちた1970年代より腐敗劣化で沈滞低迷し、全世界的に貧富の格差が広がり、厚顔無恥な卑しい詐欺師だけが社会の上位に巣くう暗黒の世界となっている…我々を救ってくれる鉄腕アトムも現れなければ、人類の宇宙への有人探査などは70年代のアポロ計画から1ミリも外に出ていない。

映画や海底ハウスなどの「作品」というものはタイムカプセルで、その中身が未来への前向きな展望であればあるほど残酷な結果が待ち受けているんだと思う…これは、まるで猿が支配する星の出来事だと思っていたら、未来の地球だったという「猿の惑星」だ。

俺なんかも、1970年に大阪万博が開催された頃に想像した手塚漫画的な光り輝く未来と、「年金はアテにするな、自助努力して2000万準備しろ」と発言する様な輩が大いばりで社会の上層を跋扈する2019年で想像する暗黒の未来は全く別物だ。

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お台場の潮風に晒されて、静かに朽ちていく「歩号1世」の悲しい姿を見ていると、一握りの上級国民という名の売国貴族共に次々と踏みつぶされていく日本人の夢を見た気がした。

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「歩号1世」は、漠然と未来は明るいと希望を持てていた時代の数少ない遺物なのだ。