ネット社会が作るモノ

教祖失格

あるユーチューバーさんの動画が好きで、時々見ていた。

そこの内容は「雑誌ムー」みたいな不思議系を扱うんだけど、連日何本もの動画があり得ない量でアップされる…個人でやっているらしいが、驚異的な更新状態が何年も続いている。




毎日動画を作成する事に1日を費やしている感じで、恐らく1日を自由に過ごせる年金生活者だと思う。

1日にアップされる複数の動画の中には主さんの日記の動画もあって、俺は日記の方を見ているんだけど、最近主さんのコメントが変わってきた。

「疲れた」とかの泣き言が中心になってきて、何のためにやっているのか判らなくなってきたとボヤいている。

ただ、俺からみれば、疲れる前の主さんは何年間も意気揚々と「動画作りが生き甲斐」という感じで張り切っていたので、主さんの突然の変化に驚いた。

YOUTUBEに転がっている不思議ネタの動画の大半はウサンクサイ連中が多い中で、件の主さんは生真面目に独特の情報を発信していたが、一般人が普通に生活していて連日不思議な発見をしたり、新しいUFO情報を入手するのは不可能だと思う。

だから主さんの日々更新される動画も中身は殆ど同じ感じで、随分前から極度のマンネリに陥っている。

俺は不思議情報に興味があるのでネット情報もウオッチしているんだけど、件の主さんの様に不思議系の情報に「行き詰まった」ユーチューバーを何人か知っているが、皆さん例外なく突然自分に不思議な能力があると言い出すのが共通点。

ある日突然真顔で神や宇宙人などとコンタクト出来る能力があるとか言いだし始める…最初はビデオ編集などの疲れが極限に達して、そういう幻覚を見たんじゃないか？と思ったが、他のユーチューバー達も同じ様な事を言い出す。

思うに、ネットという独特のコミュニティーが超能力者を作り上げている感じがする。

例えばYOUTUBEで、「雑誌ムー」の読者なら誰でも知っているような奇妙な事を発言するだけで、大半は馬鹿にされるものの、ごく少数であっても賛同者が現れ…動画の本数と共に信者が増えていく。

そして宇宙人とテレパシーで交信できたり、神々の教えを受け取れる超能力者になり、挙げ句の果てには信者達を集めて有料の勉強会などを開催し始める様になる…こういうのを宗教と呼ぶかはさておき、教祖の誕生だ。

件の主さんも、例に漏れずその路線のど真ん中を走ったが、最近開催した会合に集まった連中との間で問題が起きたのかもしれない…その会合が行なわれた日を界に「疲れた」と、急に投げやりな感じに変貌してしまった。

主さんは教祖をやるには、余りにも神経が細すぎたんだと思う。

主さんが鬱状態に入ってしまってからも、俺の主さんへのガンバリに対する畏敬の気持ちは変わらなかった…しかし、ある時変化が訪れた。

日記の中で主さんが「儲からない」という言葉を発した…俺は主さんはお金に一番遠い位置にいる方だと勝手に思いこんでいたのでこの発言に驚いた。

改めて主さんの動画をチェックすると、連日アップされる「毎回同じ様な内容」の不思議動画は不人気で、主さんが不思議とは無関係な日常を語る日記動画だけが他のより若干アクセス回数が多かった…最近その日記動画に何本もの広告が入り出したのを見て、なんだかセコくて覚めてしまった。

申し訳ないが、主さんの作品は素人の手作りとしては「微笑ましい遊び」で済ませられるが「商品」としては余りにもお粗末で、頻繁に鬱陶しく出てくるバナー広告を消す手間を掛けてまで見たい内容ではない。

生き甲斐を終わらせるのは寂しいと思うが、疲れを感じる位なら止めた方がよいのだ。