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ロシアW杯 日本VSベルギー [スポーツ観戦]

日本2-3ベルギー[サッカー]


サッカー日本代表のワールドカップは終わってしまった。

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……小学校高学年の頃だったと思うが、体育の授業で柔道を習った。

普通の体操服で2人一組になって基本的な事を習ったんだけど、俺が組んだ相手は巨漢のSだった。

Sは並外れた巨漢だったが体重に反比例して性格は大人しく、運動神経は皆無でよく皆にからかわれて泣いていた。

授業は組んだ相手を倒し、倒された側は受け身をするという段階になった。

俺はSを倒そうとするんだけど、巨漢のSはビクともしない…2人とも柔道の経験は無いんだけど大木の様なSはどうにもならなかった。

次にSが俺を倒す役になり、教師の説明通りにノロマのSが緩慢な動きで巨体を動かした…気がつくと俺は畳に倒れていた。

この時、俺はこの世の中にはどう抗っても物理的に不可能な事があるという事を学んだ。

その後…ある日、学校でいつものように誰かがSを泣かせた。

Sは泣き叫びながら太い両腕をブルンブルン振り回した…いつもは俺も笑って見物していたんだけど、あの柔道の事があってからは「もしマグレでも、あのパンチを喰らったらどうなってしまうんだ?」と、恐怖を感じた。


…ロシアW杯の日本VSロシアの試合を見て、俺はプロボクシングヘビー級のホリフィールドVSルイス戦を思いだした。

師匠のダマトが亡くなって転落していくマイク・タイソンと入れ替わる形で、イベンダー・ホリフィールドが無敵だったクルーザー級から身体を極限までビルドアップさせてヘビー級に登場した。

ホリフィールドは東京ドームのこけら落としで行なわれたタイトルマッチでタイソンを葬ったダグラスをKOして三団体のベルトを手にし、世界ヘビー級の頂点を極めた。

そこに巨漢ボクサーのリディック・ボウが登場する。

ボクシング史に語り継がれる歴史的ビッグファイトとなったホリフィールドVSボウ戦は、ボウが判定で新チャンピオンに輝いた。

第二戦も激闘となり、今度はホリフィールドが判定で勝った。

一勝一敗で迎えたラバーマッチはノンタイトル戦となり、前2試合を再現する様な激しい撃ち合いになった。

ヘビー級は体重無制限なので、試合の度に身体が大きくなるナチュラルヘビーウエイトのボウと、元はクルーザー級のホリフィールドの体格差は…まるでベルギー代表チームと日本代表チームの様だった。

好調に仕上げてきたホリフィールドは身体の切れが良く、6Rにホリフィールドの左フックが炸裂!ボウがダウンした…俺はパンチが効いているボウをこの時初めて見た。

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まるで不沈艦が沈むのを見たような、あり得ない出来事だった…カウントを数えられながら起き上がってくるボウを待ちかまえるホリフィールドに世界中の判官贔屓達が「行け!」と叫んだ!

ボウのダウンで試合の流れはホリフィールドに傾いたが、8Rになって両者激しい撃ち合いになると…ボウの右クロスを喰ったホリフィールドはあっけなく前のめりにダウン、カウント9のギリギリで起き上がるも再びダウンでジョー・コルテーズレフリーが試合をストップした。

ラウンド毎に積み上げてきた、ホリフィールドの魂の連打による死闘の時間を、ボウは規格外のビッグパンチで終わらせてしまった。

ジョー小泉さんは「パンチの強さは体重に比例する」と解説しているが、例えそれが乱打戦でのマグレ当たりでも、パンチが当れば体重のある方が勝つ…小学生の俺が恐れたSのパンチだ。

ボウからダウンを奪った後、ホリフィールドが攻め込まないでディフェンスに入っていればどうだっただろうか?と思わないでもないが、答えは「逃げられない」のが正解だと思う、一歩でも下がれば一気に入ってこられるので、勝つには前に出て攻め続けるしかなかったんだと思う。

ただボクシングとサッカーは違う…2点先制してベルギーチームを怒り狂わせた時点で、日本チームは逃げられなかっただろうか?と思う…わざと反則をして時間を稼ぐのも方法だと思うけど、それを選択しなかったのは日本チームの意志なんだと思う。

正面から戦って勝ない相手に対して、「狡猾さ」を潔しとしない日本文化を背景に持つ日本人のサッカーは、他国より多くのハンデを背負っていると思った。

日本チームは凄く善戦したと思うのだ。