特別展「運慶-鎌倉幕府と霊験伝説」 [寺社・城・仏像・ミュージアム]
神奈川県立金沢文庫
去年の春の奈良国立博物館「快慶展」、東京国立博物館(以下トーハク)の「運慶展」に続く慶派仏師の特別展に行ってみた。
「運慶-鎌倉幕府と霊験伝説」は神奈川県の金沢文庫で開催されている。
金沢文庫は八景島の近くで清瀬から行くと想像以上に遠く、時間を計ってみたら乗り換え5回で、1時間50分掛かった。
俺は横浜も滅多に行かないし、その先を電車で移動するのは未知の世界なので、今回はちょっとした旅行気分だった。
山手線・品川駅で京急本線快特の三崎口行に乗りかえる。
俺の中で京急電車といえば羽田空港へ行く電車…確か板橋に住んでいたとき都営三田線の三田で乗り換えて羽田に行った記憶があるが、それ以外で乗ったのは初めて。
品川駅構内を横切り、京急本線のホームにたどり着くが…池袋界隈には見られない奇妙なホームだった。
俺が通勤で利用する西武線や東京メトロ有楽町線などのホームは、ドアの位置があるのと、他は精々女性専用車両の表示がある位なんだけど、京急品川駅のホームはやたら色々な事が書かれたプレートが床にベタベタ貼り付けられていた…品川ってもっとオシャレな街だと思っていたけど違った。
西武線の池袋駅ですらホームドアが設置されているのに、何かゴテゴテしていて貧乏臭い。
金沢文庫に行く列車がどの列なのか?の案内が無いので全く判らないが、とりあえず金沢文庫の手前が横浜なので横浜行きの案内の上に立っていると、三崎口行がやってきたので乗ろうとすると、並んでいた場所と全く違う位置でドアが開き、ちゃんと並んでいた俺は先にゾロゾロ入る人たちの後から乗ることになった…一体どうなってるんだ?
乗り込んだ三崎口行の快特は横浜を通過。
初めて横浜の街を車窓からみた。
横浜から先はアップダウンが強くなり平坦な場所が無くなる…これは延々金沢文庫駅まで同じ状態で、街全体が小さな丘の連続みたいな感じで、電車は頻繁に小さなトンネルをくぐった。
そんな斜面だらけの場所に、ビッシリと隙間無く家が建っていた。
空き地というのが見あたらず、ビッシリと家々が隣同士接近していて…山が家の膜で覆われていた。
見渡す限り住宅街というか、山の斜面全体を家が覆い尽くしているので人口は相当多いと思うが、通勤時間帯はそうとう混むんじゃないか?などと思いながら窓の外を見ていると、金沢文庫駅に着いた。
俺は駅に行けば何とかなると思っていたので、駅構内にある周辺の地図を見るが…見つからない。
東口から出ようとすると階段の天井に案内板があり、称名寺というバス停に行けば良いらしい…。
誰かに尋ねようとしても駅周辺には猫一匹おらず静まりかえっていた。
バス停で停留所を確認すると歩いて行けそうだったので、日頃の運動不足を解消しようと歩いていく事にした。
少し迷いながら急な坂道を延々歩いた…道を聞こうにも誰もいない。
帰宅してから調べると「徒歩コース」と「バスコース」は全く違うルートで、最寄りのバス停から歩くのも、金沢文庫駅から直接歩く距離と変わらないので、金沢文庫へ行くには駅から徒歩で行くのが最適だと思う。
称名寺に着いて判ったのは、どうやら目指す金沢文庫は称名寺境内の中にあるらしい。
称名寺は金沢北条氏一門の菩提寺だけあって、想像以上に立派な寺で驚いた。
赤門から境内に入る。
真っ直ぐ歩いていると、左手にあった四脚門が渋かった。
称名寺の子院の、運慶作の大威徳明王像が発見された事でも有名な光明院の門で、切妻造茅葺、袖塀付の表門は横浜市指定の有形文化財らしい。
門の前のお地蔵さんも凄かった。
地蔵菩薩は普通はお坊さんの格好で立っているが、立派な光背があって右手に錫杖を持ち、左手に宝珠を乗せて蓮華座の上に座っている…蓮華座に着ているものが垂れ下がっている「法衣垂下」という鎌倉時代のスタイルも鮮やか。
やがて大きな仁王門に到着。
称名寺の仁王門には立派な阿吽の金剛力士像が立っていた。
1323年、由緒ある正系仏師の系譜「院派仏師」の院興、院教等の作で迫力があった。
仁王門の横にある案内に沿って中に入ると、中央に大きな池があって見事な眺めだった。
金沢文庫を探すと、トンネルを抜けたところにあった。
館内は広くなかったが、1階入り口付近に称名寺の仏像が並び、2階が運慶展だった。
平日なのに館内は満員だった。
入場者の大半が200円で入館できる65歳以上の老人で、マナーの悪さが目立った。
仏像に興味も無いのに、暇を持てあました年金生活者が物見遊山で来るから誰もが大声で仏像とは無関係な事を喚きながら館内をうろついている。
爺さんも酷いが婆さんも似たり寄ったりで「○○さんの奥さんも、こういうのが好きでね…」とか言いながら仏像には目もくれず歩き回っている…運慶の仏像を「こういうの」呼ばわりとは、こいつはここに何をしに来ているのか?とあきれた。
しかし京都の三十三間堂でもマナーを守って静かに観ているのは外国人ばかりで、日本人の婆さんの大騒ぎばかりが目立ったけど、日本人の民度の低さは世界的だなと思った。
逆に65歳以上は倍料金に設定すれば、本当に興味のある人しか来ないのでは?と思った。
価値の判らない、たちの悪いマナーなどまったくおかまいなしな奴等に慶派仏師の仏像なんてブタに真珠だけど…金沢文庫に展示されていたものは本物だった!
去年秋のトーハク・運慶展に来ていた愛知・瀧山寺の「聖観音菩薩立像」は後補で色が塗られていて、塗りがはげているままが良いか、日光・東照宮の様に塗った方が良いか議論の分かれるところで、みうらじゅんさんは塗って新品みたいにした方がよいと言っているが、俺なんかはそのままいじらないで欲しいと思う方だった。
だから瀧山寺の仏像も好ましく思っていなかったんだけど、実際にトーハクで実物を見て考えが変わった…良いモノはどうやっても良かった。
トーハク運慶展の仏像でベスト3に入ると思った。
だから、今回も瀧山寺の梵天立像を楽しみにしていた。
思ったより小さかったけど良かった…これを観れただけでも遙々清瀬から来た甲斐があった!
俺の横で梵天の顔を「ひとつ、ふたつ・・・」と大声で数えるボケ老人の声も気にならなかった…通路の反対側に回ると、真後ろからの姿も見れた。
また、誰も観ていなかったけど、運慶作の舞楽面も素晴らしかった…俺は見向きもされない運慶の作品を一時独占し、譜面を観て自分だけのモーツアルトに酔いしれるサリエリの様な心境だった。
運慶作の鎌倉・光触寺の秘仏「阿弥陀如来像」も凄かった。
トーハクにも来ていた横須賀市・曹源寺の十二神将は頭に干支の動物が着いているタイプなんだけど、説明されている干支と頭に乗っている動物が違っていて、後補で間違って付けてしまったらしい…どうせなら全部取ってしまえば新薬師寺みたいでカッコ良いのにと思った。
俺はどうも十二神将の頭の上の動物が好きになれない。
コラーッ!って怒りの表情なのに、頭上は可愛い動物なのが気に入らない…どうせなら動物達も怒りの表情にして欲しい。
そして、素晴らしい仏像に出会った。
伊豆にある「かんなみ仏の里美術館」の勢至菩薩立像…慶派仏師「実慶」作の勢至菩薩立像が良かった。
阿弥陀如来坐像の脇侍らしいが、伊豆の仏像に興味が湧いた。
大満足で終了…受付で図録を購入し金沢文庫を出た。
俺以外の客は皆徒歩で駅に向かったが、路線バス大好きな俺は遠回りになるが、再びバス停まで歩いてバスに乗った。
バス停まで戻った人は1人もいなかった。
京急バスは初めて乗ったが、料金などの方法が普段乗っている西武バスと同じだったので違和感無く乗れた。
去年のトーハクの運慶展に続く「もう1つの運慶展」は、期待委通りの見応えのある展覧会だったのだ。
去年の春の奈良国立博物館「快慶展」、東京国立博物館(以下トーハク)の「運慶展」に続く慶派仏師の特別展に行ってみた。
「運慶-鎌倉幕府と霊験伝説」は神奈川県の金沢文庫で開催されている。
金沢文庫は八景島の近くで清瀬から行くと想像以上に遠く、時間を計ってみたら乗り換え5回で、1時間50分掛かった。
俺は横浜も滅多に行かないし、その先を電車で移動するのは未知の世界なので、今回はちょっとした旅行気分だった。
山手線・品川駅で京急本線快特の三崎口行に乗りかえる。
俺の中で京急電車といえば羽田空港へ行く電車…確か板橋に住んでいたとき都営三田線の三田で乗り換えて羽田に行った記憶があるが、それ以外で乗ったのは初めて。
品川駅構内を横切り、京急本線のホームにたどり着くが…池袋界隈には見られない奇妙なホームだった。
俺が通勤で利用する西武線や東京メトロ有楽町線などのホームは、ドアの位置があるのと、他は精々女性専用車両の表示がある位なんだけど、京急品川駅のホームはやたら色々な事が書かれたプレートが床にベタベタ貼り付けられていた…品川ってもっとオシャレな街だと思っていたけど違った。
西武線の池袋駅ですらホームドアが設置されているのに、何かゴテゴテしていて貧乏臭い。
金沢文庫に行く列車がどの列なのか?の案内が無いので全く判らないが、とりあえず金沢文庫の手前が横浜なので横浜行きの案内の上に立っていると、三崎口行がやってきたので乗ろうとすると、並んでいた場所と全く違う位置でドアが開き、ちゃんと並んでいた俺は先にゾロゾロ入る人たちの後から乗ることになった…一体どうなってるんだ?
乗り込んだ三崎口行の快特は横浜を通過。
初めて横浜の街を車窓からみた。
横浜から先はアップダウンが強くなり平坦な場所が無くなる…これは延々金沢文庫駅まで同じ状態で、街全体が小さな丘の連続みたいな感じで、電車は頻繁に小さなトンネルをくぐった。
そんな斜面だらけの場所に、ビッシリと隙間無く家が建っていた。
空き地というのが見あたらず、ビッシリと家々が隣同士接近していて…山が家の膜で覆われていた。
見渡す限り住宅街というか、山の斜面全体を家が覆い尽くしているので人口は相当多いと思うが、通勤時間帯はそうとう混むんじゃないか?などと思いながら窓の外を見ていると、金沢文庫駅に着いた。
俺は駅に行けば何とかなると思っていたので、駅構内にある周辺の地図を見るが…見つからない。
東口から出ようとすると階段の天井に案内板があり、称名寺というバス停に行けば良いらしい…。
誰かに尋ねようとしても駅周辺には猫一匹おらず静まりかえっていた。
バス停で停留所を確認すると歩いて行けそうだったので、日頃の運動不足を解消しようと歩いていく事にした。
少し迷いながら急な坂道を延々歩いた…道を聞こうにも誰もいない。
帰宅してから調べると「徒歩コース」と「バスコース」は全く違うルートで、最寄りのバス停から歩くのも、金沢文庫駅から直接歩く距離と変わらないので、金沢文庫へ行くには駅から徒歩で行くのが最適だと思う。
称名寺に着いて判ったのは、どうやら目指す金沢文庫は称名寺境内の中にあるらしい。
称名寺は金沢北条氏一門の菩提寺だけあって、想像以上に立派な寺で驚いた。
赤門から境内に入る。
真っ直ぐ歩いていると、左手にあった四脚門が渋かった。
称名寺の子院の、運慶作の大威徳明王像が発見された事でも有名な光明院の門で、切妻造茅葺、袖塀付の表門は横浜市指定の有形文化財らしい。
門の前のお地蔵さんも凄かった。
地蔵菩薩は普通はお坊さんの格好で立っているが、立派な光背があって右手に錫杖を持ち、左手に宝珠を乗せて蓮華座の上に座っている…蓮華座に着ているものが垂れ下がっている「法衣垂下」という鎌倉時代のスタイルも鮮やか。
やがて大きな仁王門に到着。
称名寺の仁王門には立派な阿吽の金剛力士像が立っていた。
1323年、由緒ある正系仏師の系譜「院派仏師」の院興、院教等の作で迫力があった。
仁王門の横にある案内に沿って中に入ると、中央に大きな池があって見事な眺めだった。
金沢文庫を探すと、トンネルを抜けたところにあった。
館内は広くなかったが、1階入り口付近に称名寺の仏像が並び、2階が運慶展だった。
平日なのに館内は満員だった。
入場者の大半が200円で入館できる65歳以上の老人で、マナーの悪さが目立った。
仏像に興味も無いのに、暇を持てあました年金生活者が物見遊山で来るから誰もが大声で仏像とは無関係な事を喚きながら館内をうろついている。
爺さんも酷いが婆さんも似たり寄ったりで「○○さんの奥さんも、こういうのが好きでね…」とか言いながら仏像には目もくれず歩き回っている…運慶の仏像を「こういうの」呼ばわりとは、こいつはここに何をしに来ているのか?とあきれた。
しかし京都の三十三間堂でもマナーを守って静かに観ているのは外国人ばかりで、日本人の婆さんの大騒ぎばかりが目立ったけど、日本人の民度の低さは世界的だなと思った。
逆に65歳以上は倍料金に設定すれば、本当に興味のある人しか来ないのでは?と思った。
価値の判らない、たちの悪いマナーなどまったくおかまいなしな奴等に慶派仏師の仏像なんてブタに真珠だけど…金沢文庫に展示されていたものは本物だった!
去年秋のトーハク・運慶展に来ていた愛知・瀧山寺の「聖観音菩薩立像」は後補で色が塗られていて、塗りがはげているままが良いか、日光・東照宮の様に塗った方が良いか議論の分かれるところで、みうらじゅんさんは塗って新品みたいにした方がよいと言っているが、俺なんかはそのままいじらないで欲しいと思う方だった。
だから瀧山寺の仏像も好ましく思っていなかったんだけど、実際にトーハクで実物を見て考えが変わった…良いモノはどうやっても良かった。
トーハク運慶展の仏像でベスト3に入ると思った。
だから、今回も瀧山寺の梵天立像を楽しみにしていた。
思ったより小さかったけど良かった…これを観れただけでも遙々清瀬から来た甲斐があった!
俺の横で梵天の顔を「ひとつ、ふたつ・・・」と大声で数えるボケ老人の声も気にならなかった…通路の反対側に回ると、真後ろからの姿も見れた。
また、誰も観ていなかったけど、運慶作の舞楽面も素晴らしかった…俺は見向きもされない運慶の作品を一時独占し、譜面を観て自分だけのモーツアルトに酔いしれるサリエリの様な心境だった。
運慶作の鎌倉・光触寺の秘仏「阿弥陀如来像」も凄かった。
トーハクにも来ていた横須賀市・曹源寺の十二神将は頭に干支の動物が着いているタイプなんだけど、説明されている干支と頭に乗っている動物が違っていて、後補で間違って付けてしまったらしい…どうせなら全部取ってしまえば新薬師寺みたいでカッコ良いのにと思った。
俺はどうも十二神将の頭の上の動物が好きになれない。
コラーッ!って怒りの表情なのに、頭上は可愛い動物なのが気に入らない…どうせなら動物達も怒りの表情にして欲しい。
そして、素晴らしい仏像に出会った。
伊豆にある「かんなみ仏の里美術館」の勢至菩薩立像…慶派仏師「実慶」作の勢至菩薩立像が良かった。
阿弥陀如来坐像の脇侍らしいが、伊豆の仏像に興味が湧いた。
大満足で終了…受付で図録を購入し金沢文庫を出た。
俺以外の客は皆徒歩で駅に向かったが、路線バス大好きな俺は遠回りになるが、再びバス停まで歩いてバスに乗った。
バス停まで戻った人は1人もいなかった。
京急バスは初めて乗ったが、料金などの方法が普段乗っている西武バスと同じだったので違和感無く乗れた。
去年のトーハクの運慶展に続く「もう1つの運慶展」は、期待委通りの見応えのある展覧会だったのだ。
2018-02-10 23:59