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アッサン・エンダム VS 村田諒太 [ボクシング]

WBA世界ミドル級王座決定戦[パンチ]

ボクシング世界戦ラッシュだった。

田中恒成VSアンヘル・アコスタ、ファン・エルナンデス×比嘉大悟、ガニガン・ロペス×拳四朗、井上×ロドリゲスと日本人選手大活躍で…ラーメンも作れない様な短時間で瞬殺された八重樫×メリンドなんてショボいのもあったけど、世界戦ラッシュのメインは、大迫力のミドル級だった。

今回は判定の採点で物議を醸し出しているハッサン・ヌダム・ヌジカムことアッサン・エンダムと村田諒太の世界戦を清銀拳闘研究会がジックリ見てみる。

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1R 

試合開始のゴングと共に前に踏み込んでジャブを放つアッサン・エンダムに対し、両腕でガードしてのぞき見スタイルの村田諒太は不自然な程パンチを出さない。

1分半経過でも、パンチを出さない村田…レフリーはファイトを宣告しても良かったと思う。

残り1分20秒で、やっと小さな左フックを出す村田。

解説はエンダムのスタミナロスを狙う作戦だと説明するが、パンチの空振りは疲れるが、サンドバッグを打つのはリズムに乗れて疲れない、むしろ村田はガードの上でダメージがないとはいえ、打たせ放しで相手を乗せてしまった。

ラウンド終了間際に村田の右ストレートが出るものの、村田が相手の身体に当るパンチは2発だけ。

これでは村田にポイントを与える理由が見あたらない。

10-9でエンダム

2R 

1ラウンドと全く同じ展開で、生真面目にジャブからボクシングをやっているエンダムと、ガードを高く構えてパンチを受け続ける村田。

確かにエンダムのパンチも村田の急所にヒットはしていないが、それは村田も同じ。

後半、村田がエンダムをロープに追い込んでストレートを放つシーンもあったが、その後エンダムのパンチも村田のガードを破って帳消し。

10-9でエンダム

3R

立ち上がりから、再びエンダムのスパーリングが始まる…これがアメリカのリングなら場内からブーイングが出たと思う。

村田がパンチを出す度に実況アナが喚くが、的確に急所に当るパンチは見あたらず、上下を打ち分けてガードを上げさせて打ち込んだエンダムのボディーブローが良かった。

村田はアマチュアボクシングのエリートだけあって、足の使い方は超一流で、一見エンダムを追い込んでいる様に見えるが、エンダムが的確な距離を取っているのも事実で、村田の強打を恐れて逃げ回っているという解説陣のコメントは頂けない。

むしろ打ってこない村田を見越して、ガードを大きく下げているエンダムはリズムに乗ってきた。

10-9でエンダム

4R

これまでと変わらない、相変わらずのエンダムの独りスパな展開。

村田も時々パンチを出すが、全てガードの上。

ただ、エンダムも村田の硬いガードに攻めあぐねている。

一見村田がパンチを溜めて倒しに掛かっている様に見えるが、村田側に明確な組み立てが見られない。

残り30秒、村田の右ストレートがカウンターになってヒット、エンダム前のめりにダウン!

ただ起き上がったエンダムの動きはクイックで、村田も仕留めに行くには時間がなさ過ぎた。

10-8で村田。

5R

ダウンでエンダムの足が衰えれば良かったんだろうけど、全く衰えは無く、むしろ村田のパンチを警戒してガードを堅くさせてしまった。

中盤撃ち合いがあるものの、両者ガードの上を叩くだけで、どちらかといえばエンダムのアッパーなどが光った。

終盤、この試合初めての激しい撃ち合いになり、村田がエンダムをコーナーに追い込んだ。

しかし、エンダムはリング中央に戻って足を使って更に大きなパンチを振り回しスタミナがあることをアピールしたが、出したパンチは全てガードされていた。

10-9で村田

6R

エンダムの踏ん張りが怪しくなる。

村田それを見て、打って出る…俺はこの流れで終わりだと思った。

しかし中盤まで退屈な駆け引きが続き、エンダムが回復してくるのがハッキリ判った。

後半、初めて村田が連打を打ち、相手を追い込んだ。

残り1分、エンダムのガードが下がったところに、村田のストレートが炸裂。エンダムがロープに吹っ飛ぶ…やはりミドル級の試合は迫力がある。

それ以後はエンダムのスパ練習に戻り、村田は一発を狙っているのか、相手を見てしまって終了のゴングを聞いた。

実況はエンダムの粘りと言い続けるが、エンダムは出来ることをやっていて、村田はそれに付き合っている様に見えるのが勿体ない。

決められたラウンドだったと思う。

10-9で村田

7R

6R終盤からの続きって感じで、足を使って逃げまくるエンダムに付き合う村田。

エンダムの戦い方が明らかに変わり、逃げ回りながらスタミナの回復を待っている感じ。

中盤、村田のストレートが当ると、バタバタになってしまうエンダム…村田のパンチがあと一発当れば終わると思った。

残り45秒にも村田の右ストレートがヒット、エンダムはロープが無ければダウンだった。

その後も、村田が一発出すとエンダムもパンチを連打で返すが、全てガードの上で明確なダメージは与えていない。

終了ゴング前にも、村田のパンチを避けようとしてスリップするエンダム…無映えが悪すぎる。

10-9で村田

8R

試合前半のエンダムの軽やかな動きは無くなり、後は村田がいつKOするのか?という状況。

逃げ回るエンダムを絶妙な追い方で間合いを詰める村田…エンダム側からすれば、村田のガードが相変わらず高いので、ここからの逆転は難しい。

中盤、回復してきた足を使って逃げ回るエンダムを、追いかける村田。

村田の戦法は硬いガードと強いパンチのロナルド・ライトを彷彿させるが、ライトの戦法は超攻撃的なフェリックス・トリニダードなどには有効だった…トリニダードのパンチを封じ込めて、ガードを打たせて疲れた所を強打で仕留めたが、今回のエンダムの様な逃げ回る相手には苦戦した。

村田も、ガードは金メダルのお墨付きで、帝拳でプロの強打を磨いてきたが、相手が踏み込んでこないと得意のカウンターが打てないし、自分から打って出られないで「見てしまう」弱点がある。

浜田さん式で言えば「あと一発当てきれれば、勝てますから!」なんだけど、単発で連打が出ない。

10-10のイーブン

9R

相手を見すぎなので、自分から試合を作れとセコンドの指示があったのか?、1分過ぎから村田の積極的なジャブが的確に当たり出す…これを6Rからやっていれば、とっくに試合は終わっていたと思う。

エンダムも村田の強打の為、ガードを上げるだけ上げているのでボディーががら空きなのに、村田はヘッドハンターというか、相手の頭部を狙いすぎる傾向にあると感じた。

また、村田はコンビネーションブローのタクティクスが無いというか、倒すまでのプロセスを組み立てられない感じで、良いのが当るのを待っているバーナード・ホプキンス風ボクシング。

結果「良いのが当らず」ゴングが鳴った。

10-9で村田

10R

ラウンド中盤、いよいよ村田が接近してボディーを打ち始めた。

クリンチが増え、万策尽きた感じのエンダムだけど、試合を投げないのは立派。

エンダムは足にきているのか、腰を入れたパンチが打てない感じ。

俺は、村田がそろそろ自分の財布で勝負に出るべきだと思った。

10-10のイーブン

11R

開き直ったのか、中断していたエンダム師匠の軽やかなサークリング・ショーの再開だった。

中盤、村田が打って出るが、場内が沸き上がるものの全てガードの上…ただ、エンダムが真っ直ぐ下がるので、見栄えが悪く村田が優勢に見える。

良くも悪くもエンダムの頑張りが目立った。

10-9でエンダム

12R

まだ生きているパンチを武器に前に出る村田を、足を使って逃げ回りながらジャブを放つエンダム。

村田は最後まであと一発を「当てきれず」に試合終了。

10-9でエンダム



俺の採点では114ー115の僅差で村田の勝利で、2度付けたイーブンをアグレッシブを取ってエンダムに付ければひっくり返った試合だったと思う。

いずれにせよ試合後帝拳関係者を筆頭に、多くの元世界チャンピオン達が騒ぐ程の一方的な大差の試合とは思えなかった。

ただ、ジャッジの1人がエンダムに116-111を付けたのはイカガナモノかと思うが、110-117で村田のジャッジも盛りすぎだと思う。



エンダムの戦法は過去にもある…マーベラス・マービン・ハグラーvs.シュガー・レイ・レナードの試合も同じパターンで、撃ち合わず姑息に逃げ回ったレナードが勝った。

チャンピオンのエンダムサイドからすればかろうじて交わしきった試合で、村田側からすれば惜しい試合を逃した。

最も問われる相手に与えたダメージは、4Rの村田のパンチだけで、残りのラウンドはエンダムが交わしきったという事なんだと思う。

ただ、村田側から見た場合、世界のミドル級でエンダムは美味しい相手だったと思う…再戦すれば勝てると思う。

俺はセコンドの作戦ミスだったと思う…前半3ラウンドが無駄に勿体なかったのと、「明確に倒しに行くラウンド」を作れなかったのが悔やまれる。

ただ、この試合で村田の評価は上がったと思うので、リベンジを期待するのだ。