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京都・三十三間堂 [寺社・城・仏像・ミュージアム]

寺社・仏閣探訪ツアー2017 Vol.07[カメラ]

今回の見仏旅行も最終日となった。

近鉄奈良線の学園前駅に午前9時に到着。

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計画では西大寺を見て東京に戻る予定だったんだけど、鞍馬寺の仁王門で湛慶作の仁王を見て、今回の見仏旅行を慶派仏師を辿る旅にしようと、予定変更で湛慶作の千手観音がある京都三十三間堂に行くことにした…大好きな風神雷神も見たかった。

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西大寺で京都行きの特急に乗り、車内で色々調べる…古い本だけど、寺の場所は変わらないし、凄く小さいので気に入っている。

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奈良国博の「快慶展」の目録などで、重くなったリュックを京都駅のコインロッカーにぶち込んで、バス乗り場に向かう。

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バス停に到着…京都の路線バスに乗るのは、大学の時に受講していた教授の家に挨拶に行ったとき以来だから普段がどの程度の混雑なのか判らないけど、連休後の平日なので空いているんだと思う。

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勝手が判らないが、PASMOが使えるので運賃や釣り銭の無い様にコインを用意したりしないで済むので凄く気が楽。

バスから色々撮影しようと、一番前の座席に座る。

京都駅前の道路は結構空いていて、車は普通に流れていた…ちょっとイメージが違った。

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流石に観光地だけあって、案内が丁寧で、バスも綺麗で感じが良かった。


【京都】 市バス 投稿者 kiyogin





初めて乗る人にも、バス先頭にある表示がイラスト入りで判りやすい。

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車内の案内は日本語に加え、英語・韓国語に中国語だ。


【京都】 市バスからの眺め 投稿者 kiyogin





やがてバスは塩小路橋で鴨川を渡った。


【京都】 鴨川 投稿者 kiyogin





あっと言う間に三十三間堂に到着。

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多くの人がバスから降りたが、行き先は三十三間堂では無く、皆は京都国博で開催されている「海北友松」の特別展に向かう人達だった。

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三十三間堂は丁度修学旅行団体客の合間だったのか、空いている。

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チケット売り場の前もガラガラ…これはチャンスだと早足になる。

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入り口の靴を脱ぐ場所が、最近作られた新しい綺麗な建物だった。

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靴を靴箱に入れて歩き出すと、堂内に出た…。

いきなりドーン!と千手観音群が迫ってくる…圧巻だ!

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仏像群に圧倒されながら、俺は「あ!ここに来たことがある」と、デジャヴとはまた違った微かな記憶が蘇る感覚があった。

俺は奈良県の小学校に通ったので修学旅行ではないが、「遠足」のコースに入っていたのは間違いないと思うので、子供の頃の記憶だと思う…小学生の遠足なんて、子供からすれば行きたくもない寺などに連れて行かれて退屈だし、参拝している人には騒がしい小学生の団体なんて迷惑なんだけど、それでもオッサンになった俺の記憶の中に残っていたという事は、子供に「本物を見せる」のは意味のある事なんだと思った。

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三十三間堂は約120メートルの堂内中央に鎌倉時代の仏師湛慶作の本尊千手観音坐像を安置、その左右に500体の千手観音立像が10段50列に並んでいるんだけど、一列か二列、リペア中でポツンと空いていた。

千手観音には番号が付いていて、510号像には「運慶」の銘記があるが後世の偽銘というのが定説で、俺も510号像を見たけど偽銘説は正しいと思った…運慶の大日如来と弥勒如来を見てきた後なので、全然違う感じがした。



そして雷神だ!

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雷神象を見上げた瞬間、頭の中でKISSの「God Of Thunder」のイントロが聞こえてきた!

ライブでは血を吐くジーン・シモンズのベースから始まるんだけど、AMPEGでドライブさせたGibsonのGRABBER BASSが叩き出す怒濤のフレーズが頭の中で鳴り出した!

雷神は、背中に沢山の太古を背負っているんだけど、アタック強調重視の為だろう…淺胴のタムタムが、ヤマハのラックスタンドみたいな円形の枠に取り付けられているのを勇ましく担いでいる!

タムタムのヘッドは裏側も貼っているダブルヘッド仕様で、よりサステインが効くようになっている…このドラムセットで雷のゴロゴロ~ゴロゴロ~という恐ろしい音を作っている。

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因みに、この像を参考に書かれた俵屋宗達の風神雷神図の雷神が背負っているタムタムは口径が小さくて、仏像ガチャポンの雷神も海洋堂のバージョンは宗達の絵をモデルにしているのでタムタムが小さくてセッティングの向きが違う…これじゃ大きな音は出ないと思う。

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一方、エポック社の「和の心 仏像コレクション5」の雷神は三十三間堂バージョンで、タムタムが大きくかっこ良いです。

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千手観音像の山の前には、雷神・風神と本尊の周囲に配置されている四天王以外の二十八部衆像が横一列に豪華に並んでいる。

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今回の見仏旅行の初日に、興福寺の仮講堂で見た八部衆とは違った感じだけど、横笛を吹く迦楼羅像や荒ぶる神の「阿修羅王像」も見事だった。


ズラーッと並んだ仏像の最後に、一番見たかった風神がいた…周囲に誰もいなかったので、長い時間一番良い場所でボーッと見上げていた。

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三十三間堂の風神最高!

そして、やはり何と言っても本尊の湛慶作の千手観音坐像は圧巻だった。

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静まりかえった堂内では、白人旅行客が連れ歩く通訳と日本のオバチャンの声しか聞こえなかった。

堂内には韓国や中国の観光客も沢山いたけど、皆マナーを守って静かにしていた…一番喧しくて恥ずかしかったのは日本のオバチャン達だった。

ペチャクチャ関係のない世間話をしながら歩いていたオバチャン達も、本尊の千手観音坐像の前に来ると黙って拝みだして、先を争ってロウソクと線香を買って火を付けていた。

世界一厚かましい日本のオバチャンを一撃で黙らせる千手観音は凄いと思った!


大満足で堂内を見終え、売店へ。

風神・雷神グッズを探したが無くて…とりあえずお守りを買った。

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そして、矢を見に行った。

三十三間堂は、江戸時代には各藩の弓術家により本堂西軒下で矢を射る「通し矢」の舞台で、その伝統から現在では毎年1月中旬に、弓道をしている新成人が振袖袴姿で弓を引く「三十三間堂大的全国大会」が行なわれている。

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今と違って、江戸時代は各藩の名誉を背負って弓術家達が命がけで競い、その通し矢の矢が一本だけまだ刺さったままになっているのを探しに行った。

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修学旅行団体の合間なので、誰もいない…タイミング悪く団体客とぶつかると、なにもかも台無しになる。

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静まりかえった境内を独占して、カメラ片手にのんびり歩いた。

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矢を発見!

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江戸時代からここに刺さり続けているのが、京都っぽい。

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西大寺に行く予定を変更して、ここに来て良かったと思った…。


大満足で三十三間堂を出て、そのまま近くにある六波羅蜜寺まで行こうかなと思ったり…京都文化博物館で開催されている「いつだって猫展」の京都バージョン「京都だって猫展」にも凄く行きたかった。

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「いつだって猫展」は、江戸時代後期に巻き起こった「猫ブーム」の浮世絵を中心に展示されているらしいんだけど、俺は江戸時代の浮世絵師、西川祐信の「源氏物語図 若菜上」のねこさんが見たかった。

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しかし、これ以上京都を遅く出ると、戻った東京で巨大化したリュックを担いで通勤ラッシュに遭うのが怖かったので残念だけど諦めて京都駅に戻る事にした。

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市バスに揺られながら、色々考えた…。

…俺は、見仏は奈良に限定していた。

京都は禁断の地というか、京都に進出すれば行かなきゃならない探訪先が飽和になる怖さがあった。

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しかし、2014年、遂に京都の仏像の基本である「東寺」というパンドラの箱を開けてしまった。

ただ、今回初めて京都のバスを使ってみて、想像以上に楽で快適だった…京都の交通の便は奈良のように厳しくないと思った。

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また、奈良の場合は、辺鄙な場所にポツンとある寺でも古い国宝仏が多いが、京都の場合、目的を見仏に絞れば寺の数より行きたい所は少なくなる…京都の寺は建物や、屏風や天井に描かれた絵や庭などが有名だけど、見仏したい仏像の数は意外に少ない。

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広隆寺の「弥勒菩薩半跏思惟像」や、永観堂の「見返り阿弥陀」などガイドブックで語り尽くされているもの以外は少ないのでは無いか?と、これは何とかなるんじゃないか?と思った。

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そんな事を考えていると、バスは京都駅に到着した。

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いつものように、土産物は極力最後まで持ち歩きたくないので、職場への土産などは新幹線京都駅構内で購入。

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パンパンの最大サイズに引き延ばしたリュックにアレコレ詰め込んだ。

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東京から京都に行くときは、始発駅なので自由席を使うが、京都から東京に戻るときは指定席に座った。

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名古屋に着く頃「自由席が混み合いまして…」というアナウンスに、俺も旅慣れてきたのかなと思った。


のぞみの車窓から、背後に飛び去る景色を眺めながら…これからの見仏の事を考えた。

今回の見仏ツアーは、初日から北円堂の運慶仏など、いきなり凄まじいのに遭遇してしまって…余りの衝撃にこれからの見仏が見えなくなったけど、それでも俺が奈良に引き寄せられるのは、俺の中にある「桜井」のDNAがそうさせているのかもしれない。

俺の先祖の地、桜井を中心に飛鳥などを含めると、まだまだ未見の寺が山のようにある…俺なんかは長谷寺にすら行ったことがないのに、当麻寺、文殊院、などの未見の寺や国宝仏が微妙に離れた場所に点在している。

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飛鳥寺で五木寛之さん絶賛の飛鳥大仏も見たい。

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聖林寺でフェノロサ絶賛の十一面観音や、本尊の顔のデカい子安延命地蔵菩薩像も見たい。

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遠いけど、金峯山寺の青い金剛蔵王大権現も是非この目で見てみたい。

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そして見仏の奥深いところは、一度見たくらいでは何も判らないという事で、何度もリピーターで通って初めて見えなかったものが見えてくる。

「俺の見仏はまだまだこれからだな…」そんな事を考えていると、東京に着いた。


今回の見仏ツアーは、最初から最後まで最高の仏像達との嬉しい出会いの連続だったのだ。