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内山高志 VS ジュスレル・コラレス [ボクシング]

WBA世界S・フェザー級タイトルマッチ[パンチ]


具志堅用高が持つ13連続世界王座防衛の日本記録にあと「2」に迫った今回の対戦者は「インビジブル(消える男)」の異名を持つパナマの暫定王者コラレス。

試合結果は2ラウンドに3度のダウンを奪われ、俺たちのチャンピオン、日本ボクシング界の至宝、ダイナマイト内山が衝撃のKO負けを喫してしまった。

スロースターターで、打たれ弱い内山のダウンは珍しい光景では無い。

これまではダウンを奪われても修正し、そこから立て直して逆転してきた…しかし、今回はダメージが大きすぎた。
 
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2ラウンドは無理をせずクリンチで時間を稼ぐべきだったという声も多かった。

KOタイムが2ラウンド2分59秒、あと1秒でインターバルに逃げ込めた…浜田剛史さんは「もう少し時間をかければ、あのスピードに慣れたと思う。勝ち急いだ感じ」と分析したが、俺は回を重ねても内山は変則的な動きから繰り出されるコラレスのパンチに反応出来ていなかったので、ダメージが蓄積されるだけで勝ち目は無かったと思う。

結果を知って言うが、同じ負けるなら深刻な怪我を負う前に綺麗にKOされて良かったと思う…。



ではコラレスが特別凄かったんだろうか?

内山の過去11度の防衛では、変則スタイルやスピードがある選手とも戦った…コラレスがそれらと比べてずば抜けて凄いと感じなかった。

パンチも大味だし、特に内山をダウンさせてからのコラレスのボクシングは隙だらけで、内山のダメージが少なければ逆にカウンターでKOされていた程ガードががら空きだった…それを見たから、内山もクリンチせずに打って出たんだと思う。



最初から、何かがいつもと違った…試合後、俺の頭の中で「何故?」が次々とわき上がった。



何故、そこまで腰の入ったビッグパンチを被弾してしまったのか?

コラレスは内山のパンチに臆せず、勇気を持って踏み込んできた…こんなに自信満々で内山に踏み込む相手を初めて見た…目一杯踏み込むからパンチの破壊力も凄かった。



では何故内山の懐に楽々と踏み込めたのか?

いつもの内山の試合なら、試合開始のゴングが鳴るまで意気揚々としている対戦相手が、1ラウンド開始後に内山の破壊力のあるジャブが一発着弾しただけで顔つきが真顔に変った…たったそれだけで足がつったりグラつく選手もいた。

俺はそれを見て「あとは時間の問題だな」と内山の勝利を確信し、余裕を持って内山がとどめを刺す瞬間を待った。

しかし、今回の試合ではそれが無いまま1ラウンドが終了した…コラレスのペースのままラウンドを終えてしまった…俺の記憶では初めてだと思う。

この試合をリングサイドで見ていた、世界戦を見続けて47年という大ベテランのボクシング評論家「矢尾板貞夫」さんは、内山の左のリード・パンチが「おじぎをしていた」事を見逃さなかった。

矢尾板さんによれば…1週間前の公開練習でも同じように鈍かったそうだ。

つまり、内山のおじぎするパンチが怖くないからコラレスは踏み込めたんだと思う。

俺はそれを「疲労の蓄積」とか、36才の内山の「衰え」とは思わない。

というのも、コラレスは前日400グラムオーバーで1次計量を失敗している。

内山は「こんなことは初めて。猶予の2時間内に落とせなければ、ボクサーとしての資格がない」と怒りをあらわにして会場を去った。

1次計量後のルール会議では、コラレスが再計量で失格した場合について「内山が勝つか、引き分けなら防衛。負けてもタイトル保持」という変則ルールで行われることが確認されていたそうだ…。

内山が去ったあと、コラレスは2時間の猶予を使ってサウナに行き、20分間の縄跳びと、パンツを脱いでやっとのことでリミットをクリアし、そこから試合前には3階級上の67.9キロにまで増量した。

そんなコラレスの状態を伝え聞いて、内山陣営は「後半はスタミナが切れる。後半勝負で」の作戦を練っていた…「勝てて当たり前」の相手を目の前にイケイケの楽勝ムードなのに、何故か内山のジャブはおじぎをしていた…。



去年の大晦日の前戦~コラレス戦までの間、内山陣営はノニト・ドネアを倒した元WBA世界フェザー級スーパー王者のニコラス・ウォータースにターゲットを絞って交渉していたが、結果は実現できなかった。

本場アメリカでのビッグマッチが、納得できないような理由で無くなり、暫定王者になったばかりのコラレスとの統一戦に落ち着いた。

内山はコラレス戦が決定した時、取材陣に冗談交じりに「モチベーション下がるわ」と本音を漏らしていた…この時から既に戦う相手が誰だろうと「危険信号」を発していた…。
 
ラスベガスでのウォータース戦のはずが、現実は減量ミス野郎が対戦相手…コレでやる気出せと言われても、幾ら内山でも無理だったんだと思う。

名監督野村克也氏の明言に「人生の最大の敵、それは「鈍感」である。」というのがあるが、内山の危険信号に気づかなかったワタナベジムのスタッフは猛反省すべき。



俺は、アメリカでの興行が流れた時点で内山のモチベーションは完全に消えたと思っている…渡辺会長は世界中のプロモーターに通じている帝拳の本田会長に土下座してでも内山がモチベーションを持てるビックマッチを組むべきだった!

しかし、パンチがおじぎをする内山を引き締めなきゃならない馬鹿スタッフ共は「勝って当たり前」と慢心し、ヘラヘラ油断していた…渡辺会長など試合のセコンドにも着かなかった。

今回の内山敗戦の戦犯は、ロクなマッチメイクも出来ず、根拠無く慢心した渡辺会長だ。



俺は内山チャンピオンの大ファンだったので、今回の衝撃のKO負けは非常に残念だけど、どんなに素晴らしい選手でもいつかはリングを去るときが来る。

これで引退かも、というか引退した方が良いと思う…どうしても再起するなら帝拳に移籍して欲しい、ワタナベじゃダメ、あとWBAとWBCは相手にしない方がよい。


しかし、綺麗な顔のままグローブを吊す事も勇気だと思う。

内山の素晴らしい実績と桁外れの実力に相応しい本場アメリカでの興行は無くなり、具志堅さんへの記録も途絶えた。

今の内山に「それでもリングに上がらなきゃならない理由」は見あたらないと思うのだ。