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耳の良し悪し [ノスタルジア]

バイクの音[演劇]
 
 
以前実家に帰った時に、アルバムの上からデジカメで撮った写真がパソコンから発掘されたので、今回は俺の実家の思い出。
 

「耳が良い」というのは聴覚の優劣だけでなく、色んな所で色んな意味で使われる。

例えば音源のレコーディングなどで「耳がよい」という場合は、トラックダウンなどの行程で微妙な差異を聞き取れる事を言うが、こちらも聴覚テストでは無く、複数の流れる音が同時になっている状況で、その中の1つの音を2デシベル上げ下げするのに気がつくか?という話で、俺はミキサーの後ろで誰かと熱心に話をしていても変った事に気がつくので、よく「耳がよい」と言われる。

ただ、こういうのは後天的な学習や訓練で上達出来るモノではなく、先天的な生まれつきの部分だと思う。


スッカリ忘れていたが、子供の頃の事を思い出した…。

俺の父親は、俺が産まれる前はバイクに凝っていた。

俺の父親は敗戦の色濃い大阪で、まだ街で自家用車が走っているのが珍しい時代にハーレーに乗っていた。

父親はドイツ車が好きなので、BMWを中心に乗り継いでいたが、結婚して俺が産まれたので危険なバイクから降りて、4輪車に切り替えた。
 
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俺が産まれる前の両親…BMWにノーヘルのサンダル履きで乗ってる…
 
 

俺が赤ん坊の頃は、スバル360といって、フォルクスワーゲンの「カブトムシ」に対して「テントウムシ」と呼ばれた小さな車から始まって、トヨタのパブリカなどの大衆車に大人しく乗っていた。
 
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今見れば斬新なデザインのパブリカ 確か、色もコレと同じだったと思う 
 
 

やがてドーナツ化現象で公害で空気の汚れた大阪から、自然が残る奈良のニュータウンに一戸建てを買って移り住む人が増え、俺の両親も俺の祖父が事業で建てていた奈良県にある家に引っ越した。

今でこそ「PM2.5」など、中国の公害が話題になっているが、高度経済成長期の日本も酷くて、魚の住めない悪臭を放つどぶ川ではヘドロからメタンガスが吹き出て、大気汚染も光化学スモッグなどと呼ばれて、警報が出た日は子供達が学校の運動場に出られない状態だった。

大阪の隣にある奈良に引っ越すと、それまで電車通勤だった父親はスポーツカーを買って高速道路を使った自動車通勤に切り替えた。
 
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写真が無いのでネットから拝借 マーク2のGSS 
 
 

夕方、母親と俺と妹が台所のリビングでテレビを付けながらワイワイやっていると、俺の耳が何キロも遠くで鳴る父親の車のエンジンの音に気がつく。

「あ!パパが帰ってきた!」と俺がいうと、母親は「え?」と、妹を黙らせながら耳を澄ますが、何も聞こえない。

テレビの音を消して耳を澄ましても、気がつかない…つまり妹や母親の耳は普通レベルだった。

「なんや、ちゃうやんか…」といいながら、テレビの音量を戻してワイワイやっていると、ガレージに車が入ってくる。

こういう事が日常化するようになり、母親はその度に「あんた、ほんまに車の音が聞こえたんか?」と俺に聞くんだけど、俺には目の前で猫と騒ぐ妹や大きなテレビの音を「聞きながら」、同時に他の微かな音を聞き分けていた。

父親の乗る車は色々手を加えていたらしいが、冬場にガレージでチョークを引っ張って暖機運転が始まると付近一帯が排気の音圧で地震のように震えていた。


やがて、俺も高校生になり、学校の校則では禁じられていたらしいが、16才になると速攻で原付の免許を取った。

取った免許を父親に見せると、その場で「車に乗れ」と言われて、そのままバイク屋に突入した。

父親もバイクを復活させたくて、俺がバイクに乗るドサクサで自分もバイクを買う魂胆だった。

俺は原付の免許だったので、その場でどれが欲しいと聞かれ、ホンダのモンキーという一番小さなバイクを買ってもらった。
 
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モンキー君と俺…通学やツーリングなど、こいつと走り回った ハンドルに巻いているのはタイヤパンド 既にタイヤはロード仕様に変えている
 
 
 
父親は最初は中古のホンダのCB450とかを買って長期ブランクのリハビリって感じだったが、勘を取り戻すと直ぐにBMWに乗り換えた。
 
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一文字ハンドルなんだけど、重心が低いのでダルマの様に安定していて直進生は抜群だった 背景はその後引っ越した南紀白浜
 


その辺りから親子でバイク熱に火が付き、父親は当時は逆輸入だったスズキのGSX刀などを乗るようになった。
 
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GSX刀1100に乗るパパさん 

 
 
俺も400ccとかのバイクに乗るようになり…当時は違反だったモリワキの手曲げ集合管などを付けたりアレコレ色々部品を交換したりして…車検の時に戻すのが大変だった。

そうなってくると、俺のバイクのエンジンの音も、自分で乗っていてウンザリするほどデカくなっていた。

バイクを飛ばして家に戻ると、玄関に母親が飛び出てきて「あんたのバイクの音は何キロも先から聞こえるわ!」とガミガミ言われた。

俺の母親の「耳」レベルで、俺が帰る何分も前から聞こえていたって事は、相当ヤカマシイ音だったと思う。

当時はそれが当たり前だと思っていたけど、俺と俺の父親はカナリ近所迷惑な奴だったと思うのだ。