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携帯男 [日記]

シリーズ・人間観察[ペン]


この男を始めて見たのは、今から2年ほど前だったと思う。

朝、通勤ラッシュのサラリーマン達が向うのとは逆方向の、池袋駅から所沢方面行きのガラガラの準急に乗って発車するのを待っていると、ホームから男の大声が聞こえてきた。

40才位のスーツ姿の男が、コンビニの袋を手に大声で携帯電話に話しかけていた。

しかし、発車寸前になり、そのまま車内に乗り込んできた。

座席に座った男は、最初は声のトーンを落としていたが、次第にエキサイトしてきて「お前なぁ~!」と、声を荒げた。

最初は話し方からして、自分の妻に説教をしている様に思った。

男が暫く電話に喚いていると、相手が電話を切ったのか、通話が切れたらしく、男は携帯の電話帳を出して電話番号を探し出して、かけ直していた…これで、自分の妻に電話しているのでは無いことが判った。

やがて会話のトーンが落ち着きだして会話に納得したのか、男が電話を切ると、また画面を電話帳モードにして別の相手に電話をかけた。

気になるコンビニの袋から、菓子パンを取り出して食べながら電話している。

パンを喰いながら「あ、俺だけど」…やはり、相手は仕事の取引先では無い間柄の様な会話だった。

電車の走る騒音で、会話の内容は聞き取れなかったが、朝の忙しい時間帯にしては長電話だった。

男は大声で話しながら、練馬駅で降りていった…。

俺は、会社に遅刻したか何かで、後輩に仕事の事を説明しながら会社に向かっているんだと推理した。


それから数ヶ月…その男を見た同じ様な時刻に、同じ様な電車に乗っていると、後方の車両から男の大声が近づいてきた。

あの携帯男だった。

コンビニの袋が増えていた…その時は3つ持っていた。

携帯は黒くて薄いガラケーで、今回も大声だったんだけど、マナーで気が引けるのか話がエキサイトしてくると、車両の連結部分に入りドアを閉めた中で騒いでいた。

電波の状態が悪いのか、相手がキレて電話を切っているのか、何度も何度もかけ直していたが、電話番号を覚えていないんだと思うが、電話帳画面をスクロールさせていた。

話が終わったんだと思うが、連結部分から出て座席に座って、大事そうに持っていたコンビニの袋から菓子パンを取り出しながら、携帯の電話帳画面をスクロールさせ、今度は別の相手にかけたんだけど、登録してある電話番号の数が凄まじい。

やはり、相手は取引先などでは無く気安く話せる感じらしいが、共通しているのは男が説教風味の見下ろし系で語っている事で「お前、それは違うだろ!」とか、足を組み直したりして菓子パンをかじりながら落ち着き無く話に没頭している。

すると、前回降りた練馬駅で降りなかった…確か、その時は石神井公園駅で降りた。

仕事先が変ったのかな?と思った。

そして、最近久しぶりに携帯男が俺が座っている車両に乗り込んできて、俺の斜め前で立ち止まった。

なにか様子が違ったので、最初は携帯男だと気がつかなかった。

いつも持っているコンビニの袋が増えていて、その時は両手に計6つ持っていた…車内は空いていてガラガラだったが、男は袋を座席に置いて立ってポケットから携帯を取り出した。

今回はジックリ観察してみた…コンビニの袋だと思っていたが、ワンサイズ大きなスーパーの袋だと思う。

今回は白い袋だけで無く、黒い袋も1つ持っていた。

本格的な冬になっているのに、格好は秋の装いでコートとかジャンパーなどを着ていない。

そして、靴では無く、サンダル履きだった…このクソ寒い中、薄着でサンダル履きなのが異様で、袋の多さも目立っていて、ホームレスの一歩手前って感じの怪しさだった。
 
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携帯は相変わらずの、黒いガラケーだったが、声のトーンに元気が無く、少し話しては次にかける相手を探している様子だった。

男は話ながら謎の袋に手を突っ込み…菓子パンを取り出した、メロンパンだった。

俺はイヤホンで音楽を聴きながら本を読み出して…ふと目を上げると、男は俺の真横に立ってドアの前にいる鉄道員と話していた…鉄道員はその列車の車掌さんとかでは無さそうで、目的の駅まで移動している感じだった。

イヤフォンを外して2人の会話を聞き取ろうとしたんだけど聞こえなかった…車内通話を注意されたんだろうか?

でも、言い争っている感じではなかった。

携帯男の手を見て驚いた…ネットで調べると「あかぎれ」という症状みたいだけど、手のひらが紫色に腫れ上がっていた。

何をすればこんな手になるんだろうか?
 
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ネットで似た感じの写真を見つけたが、こんな感じだった 
 
 
 
乗っていたのが急行だったので、俺はひばりヶ丘で各駅に乗り換えるために降りた…鉄道員さんも一緒に降りた。

しかし携帯男はそのまま降りず、携帯電話で話ながら所沢・小手指方面に去っていった。

携帯さん…どんどん落ちぶれていっているのだ。