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黒いベース [ノスタルジア]

今が幸せ[わーい(嬉しい顔)]


俺はギターにはコレというのが無いんだけど、ドラムといえば赤、ベースといえば黒色に惹かれる。

何故赤いドラムに惹かれるか?は、また今度にするとして、今回は俺が黒いベースに惹かれる理由を徒然に書いてみる…。


俺が大学に入学した時、新入生は多くのクラブ活動の勧誘に狙われるので、事前に何処かのクラブに所属していないと、意図しないクラブに入れられてしまう…例えば応援団とかに勧誘されてしまう。

しかし、既に他のクラブに入部済みであれば勧誘から逃れられる。

勧誘逃れで、とりあえず何処かのクラブに入部しておいて、新入生部員の勧誘が無くなる夏休みが明けに退部金を払って自由の身になる…これを「援団逃れ」と呼んでいた。

俺は「援団逃れ」で軽音楽部に入部した。

今はどうか知らないが、俺の時は軽音楽部も体育会系のノリで、新入生は奴隷扱いで、2年生(俺の学校では2回生と呼んでいたので、以下「回生」で書く)が奴隷の調教役、3回生が人間、4回生が神、OBは…地獄にいる下僕の奴隷なんかには、仰ぎ見ても見ることの出来ない、雲の上の尊い存在って感じだった。

規律は体育会系と変らない厳しさで、1回生は一目見てソレだと判るように学内では赤いジャンパーを着なければならず、先輩に出くわすと「ちわっ!」と大声で挨拶をしなければならない。

挨拶をしないと怒られるから、先輩はジャンパーなんて着ていないので、顔を覚えるのが大変だった。

ミーティングという集会が平日は毎日昼間にあり「援団逃れ」のおかげで軽音楽部は凄まじい人数の新入生で溢れかえっていた。

部員が多いと部費で潤うので、「定演」と呼ぶ定期演奏会も盛んに行われていた。

先輩達は部員同士でバンドを組み、部費で近くの楽器屋のスタジオをクラブ専用で借りていたらしいが、俺は使った記憶はない…というか、学内で軽音がらみでバンドを作ったり、練習をした記憶もない。

俺は大学入学と同時に学外で入試期間中自粛していたバンド活動を再開したので、軽音楽部の中ではパーマネントなバンドは組まなかった。

俺にとっての軽音楽部はあくまでも「援団逃れ」の一時しのぎの避難場所でしかなく、ミーティングとか、順番で回ってくる部室の掃除や、演奏会などの行事以外でクラブに関わる事は無かった。

入学から時は流れ、夏休み前になって「休みが明けるまで登校する事も無いから勧誘にも遭わないだろう」と退部を申し出たら「合宿に出てから辞めるのを決めろ」と強引に誘われた…今思えば新入生達の「参加費」目当ての引き留めだったと思うが、神様である3回生の誘いを断れずに、渋々夏場は暇な志賀高原辺りのスキー場で行われる合宿に参加した…コレのおかげでバイト探しに出遅れて、この夏のバイトは散々だった。

この合宿の時だけ軽音楽部内で臨時の即席バンドを組んだ…とりあえず1回生の中でバンドにあぶれている様なのを適当に集めたバンドで、ロックっぽいのではシーナ&ロケッツとか、あとはプラスチックスとかのテクノポップ系をやっていた。

まだアナログ・シンセの時代で、キーボード担当の機材を運ぶのが、量も多いし、どれも重くて大変だった。

合宿も、連日下働きでこき使われてキツかったけど、では地獄の日々だったのか?といえば、そうでも無かった。

職場も同じだけど、この手の集団は仕事内容なんかよりも対人関係で疲弊するので、新入生にとっての目前の問題は先輩との付き合いだった。

実際に入部してみると、長年受け継がれてきた約束事が何から何までガッチリ決まっているから新入生の仕事量が多いだけで、先輩だからといって理不尽に偉ぶる奴は少なかった。

俺たちより1つ年上の2回生だけは、まだ1回生時代の奴隷としての残像が色濃く残っていて、やっとアゴでこき使える新入りが入ってきたので「先輩」という立場に昇格した事に嬉々としていたが、3回生などは「今日も下々の者達が忙しく働いておじゃるの~」ってな感じで、我々1回生には話しかけて来ないし、貴族のような優雅な感じだった。

ただ、俺はこの「先輩」というのを苦にしない。

クラブ活動と関係ないが、当時、偶然バイト先で同じ大学の先輩に出くわすと、俺が同じ大学の後輩というだけで教科書や語学の「訳本」などがもらえたし、履修届けに関するお得な情報も教えてもらって、その先輩のおかげで「しなくてもよい苦労」をせずに済んだ…だから、俺は先輩という存在に悪いイメージは持っていない。

なので、俺は自分のことより、むしろ軽音内にある「先輩達のバンド」に凄く興味があった。

2回生や3回生になってもクラブから出ずに、ひたすら楽器やバンドに専念していた先輩達は、どれだけ凄い事をやるんだろうか?、出来ればスーパーテクニックを伝授して欲しい!と、興味津々だった。

その憧れに近い感覚は、最初の定期演奏会で裏方としてステージの片隅から先輩方の演奏を拝見して、失望・落胆に変った。

つまり、どんなスキルでも1年経てば自動的に先輩に昇格出来るシステムの中で、彼らは音楽は集団として野合するための方便で、演奏の向上よりも、クラブという「井戸の中」での活動ごっこが好きなんだと悟った。

ただ、そんな体質のクラブ活動の全が退屈だったのか?といえば、そこまでの苦痛は無かった。
 
俺も俺なりにピカピカの新入生を演じて「新歓」と呼ばれた新入生歓迎コンパとかで、同級生達と笑い転げながら急性アルコール中毒寸前まで酒を呑みまくっていた…だから、親が出してくれた学費分は充分楽しんだと思う。


そんな、学内では最大の部員数を誇る軽音楽部だったが、「援団逃れ」で逃げ込んでくる1回生も、秋になると退部金を払ってドッと出て行くので、2回生からは人数がガクッと減る。

だから、先輩達も部員の中からメンバーを集めるのには苦労していて、バンドを掛け持ちしている人も多かった。

この現象はクラブ活動に限らず、ボーカルやギターは不必要な程余っていて、他は不足している傾向にある。

特に俺が軽音楽部にいた頃はベース担当が不足していて、あるベースを弾く先輩はクラブ内で4つ程バンドを掛け持っていた。

その先輩は2回生だったんだけど、3回生のバンドでも弾いていた。

いつも笑顔で偉ぶらずに、俺たち1回生にも陽気に声を掛けてくれたりして、そういう性格の良さが3回生にも気に入られたんだと思うが、その先輩が持っていたベースが、グレコの黒いプレシジョンベースだった。
 
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恐らく色は後から塗り替えていると思うんだけど、つや消しの黒だった…それが当時の俺には格好良く見えたんだ。
 
それから色んなベーシストと一緒にバンドをやったけど、黒色のベースを弾く人は少なかった…DEARERの野村氏のB.C.Richと、MargeLitchではKyo氏のミュージックマンと、後藤氏のリッケンバッカー位だったと思う。
 
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DEARERの天才ベーシスト、マーちゃんの勇姿!
 
 
 
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Kyoのミュージックマン…音が最高にゴキゲンだった! 
 
 
 
その先輩は、基本的にはハードロックの人で、プレイは上手くもないが下手でもなく、控えめに無難に弾くタイプで、音も低音が出ている以上でも以下でも無かった。

ただ、演奏会のステージで何度もその黒いベースを見ていると、俺もその黒いベースがたまらなく欲しくなった。

「ギターは人口が多いから、弾けて当たり前の競争の激しい世界だけど、ベースは人口が少ないので少々難があっても引っ張りだこだ」と思った。

この時から、俺もベーシストに転向したかったんだけど、何故か切っ掛けを逃し…その後もギターをメイン弾き続けるが、やがてベースも平行して弾くようになった。

そして、ここ最近はバンドでベースを弾くのが中心となっている…もちろんギターで参加するバンドも面白いけど、バンドだけは「こういうのをやりたい!」と願っても空からメンバーが降ってくるわけではない「縁のモノ」なので、今はベースでのバンドに縁がある。


コレがどれだけ楽しいか!!


俺の場合、ギターの演奏だと弾きたい音楽性に細かい好き嫌いが産まれる…「こういうのをやりたい」というのがハッキリして、それを追求すればオリジナル曲を作る方向に進むが、ベースでは不思議とそういう気持ちにならない。

ギターだと曲やサウンドまで細かく追及するが、ベースでは出音や技巧を追求してもギター程許容範囲のレンジが狭くなく「自分が楽しめれば音楽性は問わない」って大らかな感じになる。

ジャコパスがあれほど素晴らしいプレイが出来るのに、楽曲的には循環コードの枠内でのアドリブが多かったのも、実際にベースを弾けば「あのスタイルが最も楽しい」と、良く判る。


また、俺はベースという弦楽器そのものも大好きだけど、バンドにおけるベースの立ち位置が気に入っている。

これがギターだと、俺の場合はやりたいことを再現するためにオリジナルを作らなきゃならないので、結果的にバンマスとしてバンドを引っ張らなくてはならなくなるが、ベースだと脳天気に…ある意味好き勝手に出来る気楽さがある。

バンマスが俺に気を遣ってデリケートに話しかけて来ても、あくび混じりに脳細胞停止の脊髄反射で生返事をするだけで済ませられるのがベースという立ち位置。

人口の多い「ギター」だと上手い奴がワンサカいてハードルの位置が高いから、機材で新製品が出たと言えば試してみたり、演奏に関しても難易度が高くても「弾けて当たり前」の世界だが、ベースでは、曲を覚えてそれなりに弾きこなせば、ギターでは話題にもならない当然の事が「評価」されてしまう…曲を覚えて普通に弾くだけで「上手いね!」なんて褒められたりするので、ギターなんかとは「やり甲斐」が違う!


軽音楽部で黒のベースを持っていた先輩が、忙しくバンドを掛け持っていたのも、実際ベースを弾いてみると、それがどれだけ楽しい世界か理解できる。

「次はこんなジャンル、次はこんなジャンル」で蝶の様にバンドを飛び回り、それぞれのバンマスが眉間にシワを寄せて語り出しても他人事の様に、遠~い外国の出来事の様に受け流していれば良い…ベースって最高!


つまり、エライ先輩は見習わなくてはいけない。

俺のメインベースの色?
 
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もちろん黒なのだ!