悪霊島 映画版 [ドラマ・映画・アニメ・漫画]
鵺の鳴く夜は恐ろしい
映画「悪霊島」は横溝正史の同名の小説の映画化で、ネタバレで紹介します。
金田一耕助を演じた役者さんといえば…テレビシリーズでは古谷一行さん、映画では兵ちゃんこと石坂浩二さんが強く記憶に残っている。
それ以外にも多くの役者さんが演じたけど…例えば渥美清さんの金田一は、何で寅さんが探偵やってるの?というイメージが強かったし、映画版「本陣殺人事件」の中尾彬さんの時のはミスマッチというかシオシオな内容だった。
では石坂・古谷金田一以外の作品はダメなのか?と言えば…他にも沢山の人が金田一役をやったけど、大げさに言えば一本だけ凄いのがあった…それが「悪霊島」。
この映画はビデオ版は発売されたものの、それ以降は映画の中にビートルズの「Let It Be」と「Get Back」が挿入されていて、その使用権が切れたことでTV放映・ソフト発売出来なかった。
清銀も長らくDVD化を待ち望んでいたが、04年に問題の2曲を別歌手によるカバー版に変更して漸く発売された。
制作は1981年で、金田一を鹿賀丈史さん、磯川警部を室田日出男さんが演じるという、当時の角川映画の代表みたいなキャストだが、ナカナカの力作。
磯川警部を演じる室田日出男さんと金田一耕助役の鹿賀丈史さん
物語は古尾谷雅人さん演じる三津木五郎が、事件のあった10年前の刑部島での出来事を回想するという設定で始まる。
親を訪ねて刑部島に向かう三津木五郎役の古尾谷雅人さん
同じく角川映画の「野獣死すべし」で怪演ぶりが見事だった鹿賀丈史さんだけど、金田一も良かった。
意外に良かった金田一役の鹿賀丈史さん
当時、清銀は先に原作を読んで映画化は難しい設定が多いと思って映画館に足を運んだが、双子の真帆と片帆の岸本加世子さんも上手く出来ていたし、後半の舞台となる洞窟も凄く良くできていた。
美しさが際だつ巴御寮人
この作品は原作をまだ読んでいない人は、先に映画を観た方が良いと思う。
原作は幅が広すぎて2時間ちょっとの映画の枠の中では消化しきれずに随所が省略されているが、原作を先に読まなければ気にならずに鑑賞できる。
ただ、巴御寮人とふぶきという一人二役は映画制作サイドからすれば岩下志麻さん頼みだっただろう。
質素な巴御寮人が狂ったふぶきに変貌するのは相当の力量を持った女優でないと無理で、演じ分けるのが不可能に近い設定を熱烈な阪神ファンである岩下さんがパワーで強引にねじ伏せた感がある。
控えめで美しい巴御寮人
狂った双子のふぶき…まさか正反対の2人が同一人物だとは…
もう一つは、この映画が作られた1981年という時代が幸運だったと思う。
それから10年後に作られた同原作のテレビドラマでは、作品の重要なポイントであるシャム双生児「太郎丸・次郎丸」の骸骨が倫理上から改変され、単独の死児に変更されていて、原作からすれば良い時代に映画化出来たというか、奇跡的に「間に合った」映画と言える。
太郎丸と次郎丸…カッコええ〜!
ただ今となっては、以後日本の作品の表現の前に立ちはだかる無言の「倫理上の理由」という圧力が、この映画の存在を消極的に「隠れた名作」とさせているのかもしれない。
…確かに、えぐい話ではあるが、そこを削除してしまっては成り立たないジャンルでもある。
いずれにせよ、映画「悪霊島」は岩下志摩さんの存在感に圧倒されっぱなしの掟破りというか反則というか「卑怯な映画」。
お志麻姉さんの独断場
最後は底なしの穴に落ちてしまう…スゲ〜!!
映画は出だしからコツコツと手順を踏んで進んでいくが、ラスト30分頃からの巴御寮人がふぶきの一人二役とバレた辺りから激変し、エンディングの時点ではパワー全開な岩下志麻さん以外の出演者全員が吹き飛んでしまっている…。
「そんな奴おるか?」って設定の石橋蓮司さん演じる吉太郎を微かに覚えている程度で、巴御寮人の元恋人役の亡くなった映画監督の伊丹十三さんなんて「そんな奴出てたっけ?」って感じで忘却に葬り去られている。
俺も相手が巴御寮人なら殺されてもええわ…ってか、むしろ殺されたい!
つまり…ぬえの鳴く夜は恐ろしいのだ。
映画「悪霊島」は横溝正史の同名の小説の映画化で、ネタバレで紹介します。
金田一耕助を演じた役者さんといえば…テレビシリーズでは古谷一行さん、映画では兵ちゃんこと石坂浩二さんが強く記憶に残っている。
それ以外にも多くの役者さんが演じたけど…例えば渥美清さんの金田一は、何で寅さんが探偵やってるの?というイメージが強かったし、映画版「本陣殺人事件」の中尾彬さんの時のはミスマッチというかシオシオな内容だった。
では石坂・古谷金田一以外の作品はダメなのか?と言えば…他にも沢山の人が金田一役をやったけど、大げさに言えば一本だけ凄いのがあった…それが「悪霊島」。
この映画はビデオ版は発売されたものの、それ以降は映画の中にビートルズの「Let It Be」と「Get Back」が挿入されていて、その使用権が切れたことでTV放映・ソフト発売出来なかった。
清銀も長らくDVD化を待ち望んでいたが、04年に問題の2曲を別歌手によるカバー版に変更して漸く発売された。
制作は1981年で、金田一を鹿賀丈史さん、磯川警部を室田日出男さんが演じるという、当時の角川映画の代表みたいなキャストだが、ナカナカの力作。
磯川警部を演じる室田日出男さんと金田一耕助役の鹿賀丈史さん
物語は古尾谷雅人さん演じる三津木五郎が、事件のあった10年前の刑部島での出来事を回想するという設定で始まる。
親を訪ねて刑部島に向かう三津木五郎役の古尾谷雅人さん
同じく角川映画の「野獣死すべし」で怪演ぶりが見事だった鹿賀丈史さんだけど、金田一も良かった。
意外に良かった金田一役の鹿賀丈史さん
当時、清銀は先に原作を読んで映画化は難しい設定が多いと思って映画館に足を運んだが、双子の真帆と片帆の岸本加世子さんも上手く出来ていたし、後半の舞台となる洞窟も凄く良くできていた。
美しさが際だつ巴御寮人
この作品は原作をまだ読んでいない人は、先に映画を観た方が良いと思う。
原作は幅が広すぎて2時間ちょっとの映画の枠の中では消化しきれずに随所が省略されているが、原作を先に読まなければ気にならずに鑑賞できる。
ただ、巴御寮人とふぶきという一人二役は映画制作サイドからすれば岩下志麻さん頼みだっただろう。
質素な巴御寮人が狂ったふぶきに変貌するのは相当の力量を持った女優でないと無理で、演じ分けるのが不可能に近い設定を熱烈な阪神ファンである岩下さんがパワーで強引にねじ伏せた感がある。
控えめで美しい巴御寮人
狂った双子のふぶき…まさか正反対の2人が同一人物だとは…
もう一つは、この映画が作られた1981年という時代が幸運だったと思う。
それから10年後に作られた同原作のテレビドラマでは、作品の重要なポイントであるシャム双生児「太郎丸・次郎丸」の骸骨が倫理上から改変され、単独の死児に変更されていて、原作からすれば良い時代に映画化出来たというか、奇跡的に「間に合った」映画と言える。
太郎丸と次郎丸…カッコええ〜!
ただ今となっては、以後日本の作品の表現の前に立ちはだかる無言の「倫理上の理由」という圧力が、この映画の存在を消極的に「隠れた名作」とさせているのかもしれない。
…確かに、えぐい話ではあるが、そこを削除してしまっては成り立たないジャンルでもある。
いずれにせよ、映画「悪霊島」は岩下志摩さんの存在感に圧倒されっぱなしの掟破りというか反則というか「卑怯な映画」。
お志麻姉さんの独断場
最後は底なしの穴に落ちてしまう…スゲ〜!!
映画は出だしからコツコツと手順を踏んで進んでいくが、ラスト30分頃からの巴御寮人がふぶきの一人二役とバレた辺りから激変し、エンディングの時点ではパワー全開な岩下志麻さん以外の出演者全員が吹き飛んでしまっている…。
「そんな奴おるか?」って設定の石橋蓮司さん演じる吉太郎を微かに覚えている程度で、巴御寮人の元恋人役の亡くなった映画監督の伊丹十三さんなんて「そんな奴出てたっけ?」って感じで忘却に葬り去られている。
俺も相手が巴御寮人なら殺されてもええわ…ってか、むしろ殺されたい!
つまり…ぬえの鳴く夜は恐ろしいのだ。
2012-12-27 23:25