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間に合わなかった [日々のあれこれ]

オカルト好きの上司



今から10年前、俺が前の秋葉原の職場に勤務し始めた頃、同僚たちとの会話で不思議系の話題になった。

俺は、奈良県では無く兵庫県にも聖徳太子ゆかりの「斑鳩寺」という寺があって、そこにはまだ未発見のアメリカ大陸や南極、ムー大陸などが描かれている不思議な地球儀の話を紹介した。

同じく、現在のトルコ付近にかつて存在したオスマン帝国という国の軍人が作った地図は、当時まだ未発見だった南極大陸の完全な描写が描かれている・・・と話していると、背後から「ピーリー・レイスの地図!」という上司のK氏の嬉しそうな声が飛んできた。

ある日K氏と部屋で二人きりになったとき「もうすぐだよ、もうすぐ宇宙人がUFOに乗ってやってくる、そうなれば今の世界や社会は根底からひっくり返る、あと少しの辛抱なんだ」と言い出して、驚いた俺が負けじとUFOネタで切りかえしたもののK氏は「歩く雑誌ムー」って感じでオカルトに精通していて、良い職場に来たなと嬉しくなった。

それから数年経ったあるとき、K氏の体の具合が悪くなった。

面と向かって「俺、癌だと思う」と言われ「気のせいですよ」と誤魔化して励ましたが、K氏はそれからまもなく歩くのも辛くなりだして、検査入院で病院に行ったまま職場に来なくなった。

お世話になっていたので見舞いに行こうと会社にK氏が入院している病院を聞いたが、個人情報ということで病名も教えてくれなかったが、会社を代表して見舞いに行った人が面会できる状態では無いと言っていたという話を聞いた。

それから暫くしてK氏がお亡くなりになったことを知らされた・・・世の中は良い人から先にいなくなるんだなと痛感した。

ひょっとするとK氏は以前から自分の身体の不調に気づいていて、人類の科学文明より遥かに進んだ宇宙人の医療に救いを求めていたのかもしれない。

すごく残念だけど、間に合わなかったのだ。