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事故 [日々のあれこれ]

明日は我が身




秋津駅で爺さんが倒れるのを見た。

爺さんは停車している列車のドア付近でものすごい音をたてて倒れ、ピクリとも動かなくなった。

駅に止まっていた列車がそろそろドアを閉めて次の駅に走り出す、そんな時に70歳前後の爺さんが閉まりそうなドアに向かって走っていた。

その場所は駅の改札から少しはなれていたので、爺さんは電車に乗りたいのに加えて、自分が乗りたい場所が明確にあって、そこに向かって走っていた・・・駅の入り口から一番近いドアだと走らなくても間に合った。

爺さんが倒れると、近くにいた数人の人たちが爺さんの回りを取り囲んだ。

俺は偶然爺さんを見ていたんだけど、爺さんはつまずいて転けたのでは無く、倒れる前に意識が無かった様に見えた。

ドアに向かって走りながら脳がブラックアウトしていた。

だから受け身が取れないので、走っていた勢いのまま前屈みで列車のドア部分に頭から激突した。

もし意識があっても、その勢いで頭から鉄の塊の車体にぶつかれば一発でノックアウトだと思う。

俺の知りあいにもヨボヨボの爺さんがいたが、若い人みたいに車が来ているのが見えるのに平気で道路を横断していた。

見ているとヒヤッとするんだけど、本人は意に介していない。

誰もが同じだろうが、パッケージとしての自分の身体は経年劣化でボロボロなのに、中身の自分は子供の頃からの自分の継続なので、年老いている事を忘れているときがある。

俺も子供の頃は大人を見て遠い未来には自分も大人になるんだろうなと思っていたが、二十歳になったときは二十歳になる前と何も変わらなかった。

駅で倒れた爺さんも「こっちの車両の方が空いている!」と、若い頃の気持ちのままで走ったんだと思う。

電車に激突して倒れた爺さんを見て、気を付けないと明日は我が身だなと思ったのだ。