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和田アキラさん死去 [音楽]

孤高の超絶ギタリスト


俺はジャズ・フュージョン関係は全くの無知だけど、個人ブログの記事という事で思うまま語らせて貰う。

凄く残念だけど、フュージョンバンド「PRISM」のギターレジェンド、和田アキラさんがお亡くなりになった、ご冥福をお祈りします。

松岡直也さん繋がりでは、最近ドラマーの村上ポンタ秀一さんもお亡くなりになり寂しさのダブルパンチだ。

ポンタさんで想い出すのは、開局直後のWOWOWで日本を代表する凄腕ミュージシャンがスタジオに集まってセッションする企画みたいなのがあって、そこのドラムがポンタさんだった。

本番演奏前の、スタジオでドラムセットにマイクを立てる所からドキュメンタリータッチでカメラを回すんだけど、ポンタさんが録音した自分の音をモニターで聴いて、エンジニアに「俺の音はこんなにか細くねぇんだよ!ナントカしろ!」と怒鳴り、チャーさんなどスターが次々入ってくる華やいだスタジオが凍り付いていた…威勢が良くて泉谷しげるのドラム版って感じだった。

和田アキラの機械の様に正確な指の動きは異常だった…俺はディメオラやホールズワースに匹敵する日本のギタリストの至宝だと思っている。

ジャズ系のギターって丸い音というか昔の漫才師が担いでいた様なフルアコの、しかもフロントでポロポロ弾くみたいなイメージがあるけど、和田アキラはロック系サウンドを爆音で弾きまくっていた。

エリック・クラプトンの来日公演の前座で出演した時、クラプトンサイドからクレームが出たと聞いたが、テクニックでは和田アキラの圧勝。

ホールズワース風味のフレーズをゲイリー・ムーア並のマシンガンピッキングで弾き倒す鬼神のプレイは、レガートで弾いているホールズワースより凄いと思った。

メインギターはフェルナンデスP-PROJECT創設者の西条氏と共同開発のシグネイチャーモデル「SAW-8」というストラトシェイプのギターで、ピックアップ・レイアウトが独特でS-S-H-Sと4つのピックアップを搭載していて「和田配線」と呼ばれている。

ブリッジは「PET-3B」というロック式では無いが、KAHLERみたいなサドルにローラーを使用している独特のモノで、ここまで来れば楽器と言うよりはウエポンって感じ。

和田巨匠が独特なのがピックで、あのマシンガンピッキングを三角おむすびピックでやっていた。

何故わざわざ「おむすびピック」なのか?意味がわからないが、そういう凡人には及びも付かないところが巨匠たる所以なんだと思う。

弦はD'Addarioの10、アンプはHughes & Kettner、エフェクター関係はラックタイプのを積み上げて「ゴージャス」な感じ。

ご本人はどう考えておられたかは判らないが、俺には「テクニック至上主義」の頂点に君臨する仙人みたいなイメージだった。

「PRISM」での活躍が有名だけど、俺にとって和田アキラといえば杏里のCAT'S EYEと「W.I.N.S」かな…世界でもトップレベルの超絶技巧演奏集団だと思う。

誰も真似できない神の領域の住人だったが、それ故のプレッシャーや苦労も多かったと思う。

池波正太郎の時代小説「剣客商売」に、ある天才剣客の話がある・・・

ある日、天才剣客が開いていた道場に、若い道場破りが乱入してきた。

天才剣客は、作法も知らぬ無礼な荒くれを打ちのめした。

打ちのめされた荒くれは、「今はお前に適わないが10年後にお前を打ち負かす」と言って去り、以後2人は10年ごとに戦うが、戦う毎に両者の実力差は縮まっていった。

年月が経ち、年老いた天才剣客は病気で身体が弱り、剣を振るうことに自信が無くなる…そんな時に再び対戦の期日が迫る・・・。

これは和田アキラという神業領域の王者にも通じる苦悩で、王の座を奪おうと次々と若い新手が元気いっぱいに挑み掛かってくる。

王者はそれ等を大相撲の横綱の様に相手に胸を貸した不利な状態から投げ捨てなければならないが、多くの場合は挑み掛かった若者の勇気が賞賛され、横綱は「勝って当たり前」で終わる。

落語家なら年老いて呂律が回らなくなっても「味」で済むが、技巧派の世界は年齢やキャリアの忖度ハンデは無く、年を取れば取るだけ体力的に不利になる…和田アキラはそんな修羅の世界に最後まで絶対王者として君臨し続けた。

俺なんかは、この偉業に対してどう称えるのが相応しいのか途方に暮れるが、ヤフコメの「そう思う」の1位は「和田アキ子かと勘違いしました」で、意外にコメント数が多いと驚いたら半数以上は和田アキ子ネタだったが、コレが大半が農奴の末裔である日本人の水準。

しかし、オリンピック組織委員会や政権には80超えの呆け老害が元気満々で犇めいているのに、まだ64歳って早すぎる。

凄く残念なのだ。