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奇妙などんでんがえし [不思議]

熊の木本線風な不思議体験[たらーっ(汗)]

滅多にないことだけど…自分ではある程度の予測が付いているつもりでも、それが突然別の事だと判ると奇妙な気分になる事がある。

…俺が大好きな作家、筒井康隆の「熊の木本線」の主人公と似た不思議な経験をした事がある。

「熊の木本線」とは、ひょんな事から熊の木という部落のお通夜に参加した主人公が村人から歓迎され、うまい地酒をふるまれた中で、村人達が順番に珍妙な踊りとともに歌詞を少しずつ変えて歌い回る「熊の木節」がおかしくて笑い転げていた。

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やがて主人公の番になり、適当な歌詞を付けて踊り終え、げらげら笑いながら周囲を見まわすと、誰1人笑っていなかった…主人公は偶然にも日本に大変な不幸が起きるという忌み歌の歌詞を正確に歌ってしまっていた・・・。


俺も、「熊の木本線」の主人公の体験に似た、実に奇妙な出来事に遭遇した事があった…。

この話は数年前、俺がベース担当であるバンドに所属していた時に遭遇した出来事。

当時は激軽で小さなベースを買ったのが嬉しくて、プリアンプやエフェクターなどを色々試して夢中になっていた。

そのバンドは結成して10年近くになるらしく、ベースを募集していた…詳しくは聞かなかったが、バンマスが前任のベース担当でギターパートに転向したらしいが、その辺りの事情を聞くと他にも訳がありそうな複雑な印象を受けた。

俺には演奏レベルが期待はずれなバンドだった…特にバンマスのギターの演奏がどうしようもない初心者レベルだったが、ドラムは普通で、ボーカルだけが「なんでこんなバンドで歌ってるの?」という程上手だったのでとりあえず加入することにした。

数ヶ月経ち、メンバーとうち解けたある時、リハの帰りに居酒屋でミーティングって流れになった。

細かいことは忘れたが、俺が和んだ雰囲気の中でメンバー達の楽しそうな話題に肯定的な事を言った時だった。

そのバンドは複雑な力関係が存在している様子で、バンマスの上位にもう1人、バンマスより更にギターが下手な長老さんがいて、その長老が突然真顔になって俺に「貴方はまだこのバンドの本当の姿を知らない」と低い声でつぶやいた。

最初は冗談かなと思ったが、それまで皆で楽しく和んでいた場がシーンと凍り付いてしまった…。

俺が恐る恐る「では、本当はどういう感じなんですか?」と聞くと、「今はあなたがいるので、皆楽しそうに偽善的に振る舞っているだけです」と答え、他のメンバーも長老の意見に反論せず黙ってしまった。

俺は…皆良い人ばかりのバンドで、楽しくお酒を呑みながら和んでいると思っていたら、実は違っていた。

実際、その後バンド内部で色々あったみたいで、新参者の俺が深く立ち入る前にバンドはあっけなく崩壊してしまった。

狐につままれた様な逸話的な不思議体験は、結構身近な所に落ちているものなのだ。