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足に触れたもの [ノスタルジア]

ため池[ぴかぴか(新しい)]



これはネット掲示板なら過去ログに「既出」と怒鳴られる話だと思うが、当「清銀ブログ」で書いているのか?それよりも前のに書いているのか?これまでの膨大な記事の中から調べるのも面倒なので、重複があっても再度取り上げることにする。
こういう場合、嘘は書いていないので、重複しても中身が変わらないので気が楽だ。
もし、重複していれば、読み飛ばして欲しい。

俺の小学校高学年は、大阪から奈良に引っ越して奈良の学校に通った。
大阪のサラリーマンが一戸建ての家をベッドタウンに買って通勤する…まさに、俺の父親もその一人だった。

奈良の小学校で驚いたのは、言葉が違った…意味が判らないのも沢山あった。
俺は同じ様な大阪サラリーマンの居住区から学校に通ったが、そこから通う子供は全員大阪からの転校生…つまり俺の奈良での先輩達だったから、彼らも俺と同じ経験をしていて「大阪で言うコレは、奈良ではこう言う」という通訳というか「変換」を新入りの俺に教えてくれた。

ただ、奈良側からすれば、自分たちの暮らす土地に大阪の青白いもやしっ子が流入してくるのは、今の移民問題と同じで気分が良いはずはなく、排他的だった。

同じ大阪から大阪への転校と違い、奈良への転校生達は、「都道府県」という排他的な壁を乗り越えなきゃならない。

ひ弱でお上品だった俺の、奈良での教育係は同級生のK君だった。
K君は、学校の帰りに、主に奈良のガラの悪い喧嘩言葉を俺に教えてくれて、「もっと大きな声で!」と発音も鍛えてくれた。

本格的に奈良の地元の古い方言で話すと、隣の県の大阪人でも意味が判らないと思う…それほど地元の言葉は訛っている。

東京と違って、他人を罵ったり喧嘩するときに使う汚い言葉は大阪には無数にあるが、奈良の地元の言葉も負けていない…恐らく京都も同じだろう。

俺の同級生で、同じく大阪から転校してきたのが、教室で自己紹介をするときに自分の事を「僕」と言った為に、あだ名が「ぼく」となってしまった可哀想な奴がいた。

俺も最初に登校した日に、「おい!ちょっと来い!」とグラウンドに呼び出され、ドッジボールの「受け合い」をやらされた。
普通に投げ合って、ボールを受け損ねて落とした方が負けという簡単なルールなんだけど、「今回の新入り」の品定めは、担任教師の「皆さん仲良くしてあげて」なんて言葉とは無縁だ。

偶々俺が投げたボールを、緊張気味のFが落とした…「Fが落とす玉を投げたんだから」と、男子クラスメイトはある程度俺を認める事になった様だった。

そんな関係で、「大阪流入組」の結束は強く、学校の行き帰り以外にも、良く一緒に遊んでいた。

今の時期になると、時々思い出すのは、夏休みにお互いの元住んでいた町のプールなんかに一緒に遊びに行ったりした…学校にプールはあったんだけど、仲間と一緒に電車で行った見知らぬ町の市民プールで食べた「うどん」の美味しさは今でも脳裏に焼き付いている。

ある時、俺とKは学校下校時に、家のある方向とは逆に帰る連中達と歩いていた…特に早く帰宅してもやることもないし、その連中達と仲が良かった事もあって、珍しい事では無かった。

季節は5月だったと思うが、俺とKを含めて5人程の同級生が、ある「池」の横を通りかかった。
縦横50メートル程の小さ目の池だった…今GOOGLEの地図で確認すると、まだその池はある。

奈良盆地は、関東ローム層という火山灰の砂の上にある東京と違って、保水の良い粘土質なので水田地帯。
奈良には水田に水を流す為にため池が多い。

他にも、鯉を飼っている池や、大和郡山などは金魚の産地で金魚池が多く、夕立が降った後に用水路に行けば池からあふれた金魚がいたりする。

下校時に俺たちが通りがかった池は、鯉を飼っている池だった。
錦鯉や金色、銀色の鯉も泳いでいた…俺たちは金色の鯉を「金兜」銀色を「銀兜」と呼んでいた。

俺たちは、大きな四角い木製の箱を見つけた。
これは何だ?と、皆であれこれ推理したが、判らない…後で、それは鯉の餌を入れる箱だったが、俺たちにはそれが船に見えた。

誰かが池に船を浮かべて、乗って遊ぼうと言いだした。

俺もKも箱を押して池に放り込んだ。

小学生5人が、次々と箱に飛び乗り、箱に入っていた棒で岸を突いて…箱は沖に進んだ。
暫くして、誰かが叫んだ。

床を見ると、箱の底に穴が開いていて、そこから水が凄い勢いで入ってくるのが見えた。
全員で、水を掻い出そうとするんだけど、全然追いつかないスピードだった。

あっという間に、箱は沈没し…その時に初めて気がついたんだけど、箱に入っていた多量の鯉の餌が水面に広がり始めた。

皆必死で岸に向かって泳いだ。
俺は泳ぎに関しては自信があったので、慌てず最後尾からゆっくり泳いでいた…。

その時、俺の足に何かが当たった。

俺は最後尾で、沈んだ箱に乗っていた連中は全員俺の前で泳いでいた。

驚いた俺は「なんかおる!」「なんかおるで!」と叫んだ。
最初は、奈良のため池の王者「タイワン」かなと思った。

俺たちが「タイワン」と呼んでいた魚はライギョの仲間のカムルチーという種類の古代魚みたいな姿の魚。

最近調べて判ったのは、ライギョには「タイワンドジョウ」「コウタイ」「カムルチー」の3種類あって、コウタイが30センチ、タイワンドジョウでも成長は60センチ止まりだけど、カムルチーは巨大なのになると1メートルを超えるどう猛な肉食魚。

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ネットで見つけた98センチのカムルチー、魚も大きいが釣り上げた道具も相当凄い!

 

今考えると、水田用のため池にタイワンは沢山いたが、鯉の養殖池に凶暴なタイワンがいるのは変なんだけど、そのときはタイワンが足に触れたんだと思った。

半ばパニックで急いで泳ぎ、岸に上がって池を振り返ると、大きな池全面に真っ白な鯉の餌が浮いていた。

箱が池に沈んでから、岸にたどり着くまでの記憶は今でも覚えていて、足に何かが当たった感触も覚えている。
鯉なんて小さなモノでは無いし、コンクリートや木などに当たったのでは無い。

水槽で飼う金魚も餌のやり過ぎは良くないというが、あの池も被害があったらしく、学校でその事が話題になった。

すぐに俺たちの事だと判ったが、俺とKは、自分たちの登下校ルートとは逆方向の話なので知らん顔をしていた。

俺の足に触れたのは何だったのか?未だに判らないのだ。