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Led Zeppelin - The Song Remains the Same [音楽]

想い出のレコード盤03[るんるん]

 

当時、「レコード盤がすり切れるまで聴いた」という言葉があったが、俺にとってその言葉に当てはまるのがこのレコードだ。
もう小さなノイズやミスタッチ、細かいMCまで全て頭に入っている。

高校のクラスメイトSと、映画「The Song Remains the Same」を見にいった。
ザ・バンドの「ラストワルツ」との2本立てだった。

映画館は入り口ドアまで人で溢れかえっていて、何とかドアの中に潜り込んだ。
丁度ツェッペリンの映画が終わる寸前だった。
当時はザ・バンドに興味が無かったので、立ったままで「ラストワルツ」を見るのが凄く辛かった…「早く終わってくれぇ〜」と思っていたがやけに長かった。

超大作の「ラストワルツ」が終わると、客が入れ替わって椅子に座ることが出来た。

ドキドキしながら、「永久の歌」が始まるのを待った。

いよいよ映画が始まったが…何かよく判らないシーンの連続だった。
「イメージシーン」が多く、そういうのに慣れていなかったから「何だこりゃ?」って感じだった。
ジミーがツエッペリンのジェット機から咳をしながら降りてきて、パトカーの先導でマディソン・スクエアガーデンに入っていく…。

やがてインド音楽みたいなのが鳴り…フイルム早回しでハドソン川から見たマンハッタンが夜景に変わった…。

真っ暗な画面に鳩が羽ばたいている…我慢の限界だった。

「おいおい!どないなってんねん!全然演奏が始まれへんやんけ!」と、真っ暗な画面を見ていた。

真っ暗な画面…。

ん?時々カメラのフラッシュみたいなのが点滅しているが…真っ暗。

と、いきなりドラムが「ロックンロール」のイントロを叩き出した…画面はドラムだけにライトが当てられていて、ジョン・ボーナムの背後に置かれている大きなドラが見えるが…それはその後何度も観たビデオで知っているだけで、その時は真っ暗な中で何かが光っているとしか判らなかった。

ドラムイントロから、演奏が始まると同時にステージ全体が明るくなり、映画のカメラがステージ後方から客席に向けて撮影していたと判る。

迫力満点のサウンド!突然現れたツエッペリンの後ろ姿!画面一杯に広がる超満員のマディソン・スクエアガーデン!がスクリーンに映った途端、俺は腰を抜かしていた。

「うわっ!これや!」

全地球レベルで最高に売れているバンドは、何もかもが桁外れに凄かった!!
別世界での殿上人の華麗な演奏を、俺はただ暗い映画館の椅子に座り、ポカンと口を開けて観ていた。

奈良なんてブリティッシュのブの字も無い場所で育った田舎モノの俺は、映画館の中で完全にツェッペリンに飲み込まれ、大ファンになり、最高に楽しみ…完全に頭がのぼせてしまった。
もう映画館ごと持って帰りたいって思った。

スクリーンに映るZEPを「真似よう」とも「憧れよう」とも「羨ましい」とも思わなかった。
それは俺がモンゴロイドに生まれた時点で全てアウトな事であり、高貴な白人の世界にただ圧倒され、未開の地に暮らす土人がライターの火を見て驚くように驚嘆していた。
もちろん当時俺はギターを弾いていたが、余りにも俺の現実と乖離した世界だったので、まさにそれは「映画」の世界の絵空事だった。

これは、例えばテレビで「生活」とか「家屋」で、いきなりハプスブルク家の人々が住んでいた城を見せられる様なモノだ。
確かにハプスブルク家の人々も自分の部屋で寝起きし、風呂にも入ればトイレにも入ったんだろうけど…画面に出てくる映像は自分の生活とは余りにもかけ離れすぎていて比較対象にならない「絵空事」だ…彼らのマイセンの国宝級の食器皿と、我々のスーパーで買った安物の皿とを比べてどうする!…それと同じだ。
銀のフォークと100均のフォークを比べても虚しくなるだけだ。

この映画を観て、ツッペリンの真似をしようと思った日本人が居るとしたら、そいつは頭が少しオカシイと思う。
自分の姿を鏡で再確認する事を勧める…つまりこの世の中には努力しても補えないモノで満ちあふれているという事に気が付かなければ不幸になる。
何をするのもそいつの勝手だけど、その対象がZEPだったというのは、凄く痛々しい…そういうのは精々高校の文化祭という「若気」で終えるのが、そいつにとっても最良の幸せだと思う。

今でも、ZEPは俺にとってはアイルトン・セナとかと同格の「聖域フォルダー」に入っている別格の存在だ。

今回紹介した「The Song Remains the Same」は、この映画のサウンドトラック盤とされているが、内容は少し違う。

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素晴らしいライブアルバムで、何もかもがカッコ良いZEPの絶頂期の録音だと思う。

このレコードは俺の宝物だったのだ。