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クリス・スクワイア [音楽]

プログレ・ベースの創始者[ぴかぴか(新しい)]


イギリスのプログレッシブ・ロックバンド「YES」の唯一のオリジナル・メンバーであり、全てのアルバムに参加しているベーシスト、クリス・スクワイアさんが白血病で亡くなった。
 
ご冥福をお祈りします。

生きている限り、こういう悲しい別れは必ず来る…ただ、その対象がYESとかになると、簡単に書くのは不可能。

色んな意味で先駆者だった。

YESとの出会いは中学生の頃、FMでエアチェックしたのとかで、ピンクフロイドとかと一緒に漠然と聴いていたが、ドカッとはまったのは高校生の時。

やはり「Close to the Edge」かな、楽曲も演奏も衝撃的で…特にリック・ウエイクマンのキーボードが最高だった。
ライブアルバム「Yessongs」は宝物だった…ライブ映像の方はビデオテープがすり切れるまで何度も観た。

「Relayer」も良かった!パトリック・モラーツが最高で、一番最初にCDで買い直した…池袋の明治通りを目白方面に、歩いて、坂を少し上がった所にあったタワーレコードで輸入盤で買った。


アルバム「Fragile」の頃の曲などが聴きたくてABWHを観に行ったけど、ベースはトニー・レヴィンで、指に割り箸みたいなのをくっつけて弾いていたりで、曲はYESの曲なんだけど、別物って感じだった。
 
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ただ、ロジャー・ディーンの壮大な絵が復活したりで、ジョン・アンダーソンの理想世界って感じだった。
 
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初期からこの頃のYESは、俺にはリスナーとして聴くモノだった。
その理由は、ギターがロックじゃ無いからで、それはABWHのギターパート以外の演奏でも感じた。
ちょっとロックの熱さという角度ではスティーヴ・ハウのギターは残念だったが、逆に「個性的」という意味では最高の存在だった…そういう意味ではABWHは本家YESよりプログレ的なバンドだったと思う。

そして遂に…バックで常にキンキン弾きまくるヘンテコ・ギターから、モダンで明晰なロックギターに替って「90125」という神アルバムが発売された!


もちろん来日公演を観に行った…今振り返れば、俺の大好きな90125YESの、最も勢いのあるときのライブだった…。
 
会場は、渋谷のNHKホールの先にある国立代々木競技場だった。
 
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会場入り口から通路が左右の客席に分かれるんだけど、その高い位置にある通路の真下にYESのステージが見えた。
 
それはアンプやモニターが床下に組み込まれていて、客席からは見えない仕様のステージだった。 

俺はクリス・スクワイアの立ち位置を注意深く観察したんだけど、Moog Taurusなどの足鍵盤が無くて、スイッチみたいなのがステージフロアに直接組み込まれていた…つまり、マイクスタンドが出たり引っ込んだりとか、ステージのフロア全体がYESの持ち込み機材だった…トレヴァー・ラビンのエフェクターボードというかスイッチボードの巨大さに驚いた!
 
何もかもが桁外れに贅沢で、それが当たり前なステージだった。 
 
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演奏が始まった途端、着ている衣服が重低音でブルブル震えた!
ABWHの経験で「曲や演奏は凄いけど、音の迫力はプログレバンドでしょ」と油断していたというか…正直舐めてた。
 
次のオリンピックの為に壊されるのか、既にアホ役人共に壊されたか、良く判らないが、国立代々木競技場は色んなバンドのライブで行ったけど、今振り返ればこの時のYESのライブが一番「音が良かった」…代々木オリンピック・プールはライブを聴くには広過ぎるし、壁がコンクリートなので反響が凄くて音は良くないんだけど、このライブの後で「最高のオーディオ機器を使って大迫力でCDを鳴らしている様な、寸分の狂いも無い完璧な演奏だった」って思ったのを覚えている。  
 
実際の90125YESの演奏は、再結成ディープパープルとかの、やる気のない中途半端なハードロックバンドなんかよりもヘヴィーで迫力があった! 

特に「ベースの音をここまで出さないとダメなんですか?」という程、クリス・スクワイアのバランスはデカかった。
デカいんだけど、邪魔にならないというか、必要不可欠な音だった。 

音が異質なまでに激硬なんだけど、凄まじく重低音も出る…これはリッケン4001でも、他のヘンテコリンな形の緑色ベースに持ち変えても変わらなかった。

そして「Close to the Edge」のキーボードソロの前の「I get up, I get down」の所で、ステージを真上から見たときには確認できなかったMoog Taurusの音が炸裂した…音圧で全身がビリビリ痺れる、世界一グレイトなベースサウンドだった!
 
全身を超重低音に包まれ、俺は無重力の宇宙空間を彷徨っていた…。
 
ABWHとの違いはベーシスト…だから、クリス・スクワイアでないとYESにならない。
 
ドンシャリサウンドや超絶ベースプレイ以前に、YESの楽曲では頻繁に出てくる、ツインボーカル的なハモりパートだけをとっても本人でないと再現不可能だから、最初から真似たりコピーする対象にならない…そういった意味でも、単なるベースパートでなくYESのクリス・スクワイアという唯一無二のパートだったと思う。
 
凄く残念としか言いようがない…。 
 
俺にとってプログレッシブ・ロックバンドレってYESだった。 

なにか、プログレが終わったって気がするのだ。