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WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 内山高志 VS 金子大樹 [ボクシング]

内山の笑顔[パンチ]

 


大晦日は2つのボクシング中継をテレビ観戦した。

時々「ガキ使」にもチャンネルを合わせたが、落ち目の大御所に無理して笑ってスポンジ棒のソフト叩きで痛がるフリして…見ていられなかった。
無理して大晦日恒例にする事ないのに…というか、「ガキ使」自体が完全に終わっている。
マジで1分持たなかった。

まずはライトフライ級ノンタイトル10回戦。
これはミニマム級前王者の宮崎亮が30日の計量で減量苦から意識もうろうだったので、実際試合をするのは危険すぎたと思う。
前日計量時に歩けないので背負われてやってきて、白目を剥いて失神。
陣営から「早う正座せい!」と声を掛けられ、全裸で計量器の上に座り込んでリミットいっぱいでパス。
試合も殆どパンチが出ず、一方的に打たれてKO負け…こんな試合は中止にするべきだったと思う。

勝ち負け以前に「年末に嫌なモノを見た」という不快感だけが残った。

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2度目のダウンから立ち上がるもKOを宣言され、レフリーに抱えられて失神する宮崎…こういう状態の選手をリングに上げるのは危険すぎる!

その後の試合だったので、続いてWBA世界ライトフライ級タイトルマッチ 井岡一翔 VS フェリックス・アルバラードも楽しめなかった。
実況は大げさな事を言うが、手数の割にクリーンヒットが無い楽な相手だった。

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という事で、お粗末で胡散臭さい井岡ジムの興業からチャンネルを変えて、気分一新!
いよいよ「本物のボクシング」の試合だ!

まずはWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 三浦隆司 VS ダンテ・ハルドン

アレコレ書く前に、まずレフリーがダメ過ぎた。
2Rの三浦は明かなダウン、ハルドンのダウンも2度スリップというジャッジ、後、再三の三浦のローブローもおとがめ無しで、怒ったハルドンも思いっきりローブローで返していたが、こちらも不問に付された。
レフリーが気になって気になって、集中して試合が見れなかった。

でもハルドンは三浦からすれば楽に勝てる相手で、3RまでにKOだった試合だと思った。
三浦自身も「1Rで勝てると思った」と言っているし、事実相手のメキシカンは最初の一発目がチョンとボディーに当たっただけで内股のへっぴり腰になっていた。
ニューハーフみたいなへっぴり腰の相手の動きを「見てしまって」9Rまでの長いお付き合いは、良い出来とは言えないと思う…セコンドも策がなさ過ぎ。

挑戦者のハルドンは出だしの一発でボディーが致命的に効いてしまって、本来踏み込んで打つパンチが売りなのが撫でるような猫パンチになってしまって、見ていて気の毒だった。
ちょっと連打されると、自分のコーナーを見てしまう精神的弱さもあって…ある意味予想通りの楽な挑戦者だった。
本来三浦のハードパンチがあれば序盤でスンナリ沈められた相手と、ドツキアイの体力勝負をしてしまう不器用さが勿体なかった。

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ハルドンの鼻が折れた瞬間

三浦は相変わらずヒヤッとする程ガードが下がりっぱなしが気になった…ボクシングが粗い!

れからもメキシカンキラーとして防衛していくのなら辛口に言わないけど、次に内山戦を考えているのであれば、ちょっと勝てる気がしないって内容に見える…
深刻なダメージを負う前に堪えずに倒れた方が良いと思う…でないと、こんな隙だらけのボクシングでは、下手すれば殺されると思う。


そして待ちに待った2013年の日本ボクシングの大トリ!
WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 内山高志 VS 金子大樹

盛り上がった試合だったが、見た目の派手さ以上に出だしから内山の一方的なボクシングだった。
ただ、金子も挑戦者らしくパンチの命中率は低いが、手数を出していて、その闘志が試合を盛り上げていた。

身体の大きさでは内山より大きく見え、パワーもほぼ互角、違ったのはキャリアの差と実況席は言っていたが、俺は感情のコントロールの上手な方が試合を制したと思った。
内山は常に冷静に試合を運び、金子は若さとか経験とかより、熱くなって正確さを欠いたと見えた。

駆け引きは中に入りたい金子と、突き放したい内山の戦い。
試合前半は互角に見えたが、パンチの正確さでは想像以上に開きが出ていた。
中盤まで金子のビッグパンチも凄く、両者一瞬たりとも油断できないヒリヒリした展開が続くも、5R辺りから内山の見事なカウンターがバンバン決まり出す。

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小泉さんが解説なら、「○×選手ならロープに吹っ飛ばされてますよ」とか言いそうな、並の選手であれば試合終了というKOパンチを繰り出し、みるみる内に金子の顔面がボロボロになる。

9Rで、俺の自己採点では内山の一方的リードで、金子が勝つにはKOしか無いと思った。

試合は10Rに入り、驚異的に打たれ強い金子は諦めずに前に突進する。
それを捌く高山だが、ラウンド終了間際に金子の渾身の右が炸裂!内山ダウン!!

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内山冷静にカウントを聞きながら、笑顔で立った!

内山は相手の目を見ていたんだと思う、内山をダウンさせた金子のパンチは、その前に一発ビッグパンチの布石はあったものの、決めたブローはヤケクソ気味に放った、辰良さんを倒したダニエル・サラゴサや内藤さんが得意だった「アッチ向いてホイ」パンチだった。

狙ったのでは無く、偶然のラッキーパンチだったと思う…ただ、内山には見えていない「反応出来てない」パンチだったので破壊力は抜群だった!

内山の凄いところは「堪えない」ところ。

打たれ弱いのもあるんだろうが、我慢せずにダウンして、2ポイント失ってでもそれ以上の被弾ダメージをレフリーにカウントさせる事で強引に断ち切る…凄く冷静に計算されている。


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大興奮の場内!!試合再開になるもラウンド終了のゴング!!

内山ゴングに救われた様に見えたが、コーナーに戻ると凄く冷静で息が乱れていない!しかも笑顔!

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この様子を金子陣営は見るべきだった!!

11R、これで試合を決めるぞ!と、金子が前に出るが、冷静さを欠きパンチが大振りで、バランスを崩す…そこに有り得ない命中率の内山のパンチが次々と着弾した。

それまで普通に試合をしていた内山が、遂にスーパー本気を出した様に見えた!!

11R開始から倒しに出た金子の大振りを見切って、内山がカウンターを3度連続で叩き込んだ…これでこの試合は勝負あったと思った!!

内山の狙い澄ましたカウンターと、激速のワンツーの連続で、金子の頭から血と汗が飛び散り、残り2分の時点で金子の顔面はみるみる内に変形し腫れも酷くなった!ちょっと金子が殺されるんじゃないか?と恐ろしかった。

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内山のカウンターが効いて足に来ていた…これまでの挑戦者なら、ここで試合は終わっていた。

形勢は一気に内山優勢に逆転!!しかも、まだ2分ある!!

金子前に出る!内山ロープを背負う!金子左右のフックを繰り出すが、内山のブロックがロナルド・ライト並に堅い!!
金子打ち疲れと打たれたダメージで、パンチ力が急速に無くなる…俺は金子はこのラウンド最後まで持たないと思った。

金子、手数が減るが前に出てくっつく…これが逆に良かった、距離を取られれば内山のロングで倒されていた。
金子の空振りに対し、内山の速いワンツーが何度も決まる…内山が過去に挑戦者を葬ってきた必殺の「飛び込んでの左アッパー」も見事にテンプルに着弾するが、金子は倒れない…金子打たれ強すぎ!…内山よろける金子の両肩を押しつけたりして、攻めあぐねるというか困った顔つきになる…恐らく金子の健康を心配していたんだと思う。

残り45秒、内山のワンツー、顎を狙った強烈な右の打ち下ろしが決まるが金子ビクともしない!!

俺は内山が右拳を痛めてしまって、強打が打てないんじゃないか?と疑った…それ程金子は打たれ強かった。

残り35秒、内山の凄まじい右アッパーが、前に出た金子にカウンターで決まり、金子一瞬動きが止まるも再び前進!!
残り29秒、内山の強烈な右カウンターが決まり、解説の畑山さん八重樫さん2人が「ウオー」と叫ぶ!!
そこから内山が金子を左右の連打でコーナーに追い詰める…俺がレフリーならここで止めている。
金子、パンチでは無く、体ごとの突進で押し返す…パンチには力が無く、腕の軌道がぶれているので内山には一発も当たらない…が、諦めない!!ど根性だ!!笑う内山チャンピオン…そしてラウンド終了!

コーナーに戻る内山は笑顔で綺麗な顔をしていて、息が乱れていない。
「あいつ大丈夫か?既に死んでいると思う」って感じで、驚異的に頑張る金子に驚いている。

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一方の金子は打ち疲れもあり、被弾で顔面もボロボロ。

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俺がジャッジなら、このラウンドはダウンは無かったが内山に10-8を付けてる。

場内は熱気と歓声で異様な盛り上がり!!

そして最終ラウンド!
場内大歓声…ここ数年の国内の試合で最高の盛り上がりだと思う。

金子が信じられないほどの底力で前に出る!
しかし、内山が冷静に捌く!まるでマタドールだ!
内山のコンピュータの様に正確なジャブが綺麗に急所に当たる度に金子の頭がグラっと後ろに傾く。
内山はロープを背負うとサッと体を入れ替えるのが、まるでまだ1Rの様に速い!
この内山の驚異的な体力の秘密は「捨てパンチ」の空振りが無いので、スタミナの消耗も少ないんだと思う。

最終ラウンド、ラスト10秒が凄かった!
フラフラの金子に後一発で仕留められると、内山が飛び込んでフックを振り回す…この試合で初めて内山が感情的になった、それまで機械の様に正確だった内山のパンチが流れた。

試合終了!!内山は金子に笑顔で語りかけ、フラフラの金子もリング中央で内山の言葉に頷く…精根尽きている金子は本当はすぐにでもコーナーの椅子に座りたいんだけど、意地で立って内山の話を聞いている…これが男同士の会話だ!!

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残念ながら内山のKO勝ちはならなかったが、金子は何処かの3階級制覇みたいに「倒されないボクシング」で逃げ回っていた訳では無いので、素晴らしい感動的な試合になったんだと思う…両者の健闘を称えたい!!


KOダイナマイト!内山高志、V8達成!!


金子は善戦したが、やる前から判っていた事だけど、相手が悪かったね…三浦チャンピオンの方に挑戦していたら勝てたかも。
判定結果はジャッジ3者共117-110で内山の勝ち!!

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インタビューでもケロっとしているチャンピオン…この人に勝つには根性論では無理

しかし、採点差以上に金子は内山を追い詰めるというのは言い過ぎだけど、困らせていたと思う。
内山チャンピオンは冷静で、スタミナがあり、クレバーだった!!
10Rで内山をダウンさせた事で、本気にさせてしまってからは、ちょっと金子が可哀想になった。
あれだけ内山の強打に耐えた選手はいないので、深刻なダメージが無ければ良いが…充分休んで欲しい。

ただ負けたことで金子の価値は下がらなかったと思う。

これまで見渡すところ敵無し状態の内山と、フルラウンド打ち合った金子はむしろ評価がアップしたと思う。

できれば金子は次戦三浦と戦って、勝った方が内山とやる流れが最高だと思う。

試合終了後、内山チャンピオンが右拳をアイシングしながら「倒せなかったなぁ~」と陣営と笑顔で会話をする画面のところで、解説の畑山さんが試合の感想を聞かれて「凄い試合でしたねぇ~、まあ、最近は、たまにしょうむない世界戦もあるけども、こういう、これぞボクシングだっていうね、ボクシングを見せてくれましたよ」と、興奮気味に語ってくれたのも、亀田次男の八百長試合の後だから、日本中の「本当のボクシングファン」の溜飲を下げたんじゃないかな。
そういう意味では、亀田のせいで曇り汚れていた日本ボクシングの状況を、年の最後に内山がスキッと大掃除してくれたって感じだった。

この試合がボクシングというモノだとすれば、亀田3兄弟の試合はジョークみたいなもんだ。

間違いなく年間最高試合なのだ!!