リディック・ボウ VS イベンダー・ホリフィールド 第2戦 [アナログメディアのデジタル化計画]
清銀拳闘観戦倶楽部がこれまでに観てきたボクシングの試合の中でNo-1はどれか?と問われれば、俺は迷わずこの試合だと答える。
賛否両論はあるだろうが、ホリフィールドファンの俺はこの一戦が最高試合なんだ。
まずこの試合を紹介する前に、この試合までのヘビー級の流れを掻い摘んで紹介したい。
まず、1960年代にモハメド・アリというスターが登場した。
文字通りスーパースターのアリも70年一杯で引退。
スターのアリが抜けた痛手は大きく、その後アリのコピーの様なラリー・ホームズが長期政権を築くが人気は出なかった。
そんなあくびの出る退屈なホームズ時代をマイク・タイソンが一瞬で終わらせた。
それまで腹の出た大男達のヘビー級に、小さな筋肉の塊のタイソンが登場し、次々と巨漢ボクサーをなぎ倒す様は新しいヘビー級を印象づけた。
新しいスターのタイソンが快進撃を続ける中、ヘビー級の一階級下のクルーザー級に「リアルディール(本物)」というリングネームを持つイベンダー・ホリフィールドという凄い奴が現れた。
ホリフィールドはオリンピックに行けなかったタイソンと違い1984年、ロサンゼルスオリンピックライトヘビー級で銅メダルを獲得し、クルーザー級でプロ転向後あっと言う間にWBA、WBC、IBFの3団体を統一し、同階級に敵なし状態となり、「ヘビー級でも最強であることを証明する!」と宣言し、タイトルを返上、ヘビー級戦線に加わった。
ヘビー級転向時には、「クルーザー級のスピードを保ったまま増量」する肉体改造のため、NASA協力のもと科学トレーニングを実践、負荷器具を身にまといシャドーボクシングする姿が話題となった。
タイソンの向かうところ敵なし状態だったところに、ホリフィールドというライバルが出現し、2人が激突するのも時間の問題となっているときに、タイソンが東京でジェームス・ダグラスにまさかのKO負けとなる。
ホリフィールドは、タイソンに勝ちWBA・WBC・IBF統一世界ヘビー級タイトルを持つダグラスと対戦し、いとも簡単に3ラウンドKOで葬り去りクルーザーからの2階級制覇を達成、近々タイソンとの戦いがあるという流れだった。
そんな時、タイソンと同じニューヨークブルックリン出身のリディック・ボウという巨漢ボクサーがホリフィールドに立ちはだかる。
ホリフィールドVSボウの第1戦
身体の小さいタイソンや、科学的にビルドアップしてヘビーの肉体を作ったホリフィールドと違い、ナチュラルヘビーの身体を持つボウは強かった
スキンヘッドにする前のホリフィールドだ!!
ボウはソウルオリンピックのスーパーヘビー級で銀メダリスト獲得という鳴り物入りでプロ転向…因みにボウに勝って金メダルを獲得したのはカナダ代表だったレノックス・ルイス…ボウは無敗のまま勝ち進み1992年11月13日、遂にホリフィールドと対戦して3本のベルトを獲得する…この試合は壮絶な死闘となった。
この頃のホリーは大きなマウスピースだった、なをレフリーはジョー・コルテーズ
新統一チャンピオン誕生の瞬間
3団体統一チャンピオンになったボウは、WBCから指名試合としてソウル五輪の決勝で敗れたルイスとの対戦を義務付けられたが、それを拒否し、記者会見の場でWBCのチャンピオンベルトをゴミ箱に捨てるパフォーマンスを行い、WBCはボウの王座を剥奪しルイスを新王者に認定した。
髪がドレッドで無い短髪のルイス!!
この時期、本来のベルトの持ち主であるタイソンは92年にディズィリー・ワシントンをホテルの一室でレイプしたとして刑務所へと収監されて主役不在状態となり、人々の関心は大いに盛り上がったボウ・ホリフィールドの第二戦に向かった。
そして1993年11月6日、両雄は再び拳を交えた。
実況はお馴染み高柳アナにジョーさんと浜田さん。
若い!
試合はラスベガス・シーザースパレスで行われた
リングアナはお馴染みマイケル・バッファー…こちらも若い!
両者をさばくのは名物レフリーのミルズ・レインなんだけど、何でヘビー級の試合にこんな小男が出てくるのかが判らない
レフリーが一番目立っているって、どうなんだろうか…とにかくこのレフリーは余計な前置きが長すぎる
1Rのゴング開始後からガンガン打って前に出るボウに面食らった感じのホリフィールド。
終わってしまうのか?と思うほどボウがプレッシャーを掛けるが、後半ホリフィールドも盛り返す。
ホリフィールドは第一戦の様な足を止めてのパワー勝負を避け、足を使いスピードボクシングをする。
試合は落ち着き、ホリフィールドのパンチが的確に当たるようになる。
試合開始から飛ばしすぎたのか、早くも3R辺りからボウの動きが失速、息切れ状態に見える。
幾度か両者エキサイトする場面があったがレフリーが小さすぎて裁けていない。
ホリフィールドが押し気味に試合を進めた7R、突然上空からパラシュート男が降ってきてリング横に落ちた。
最初ホリーが異変に気づいて試合がストップする
一体何がどうなって、どういう理由で落ちてきたのか?未だに謎だ
場内は騒然となり、試合は約20分中断。
この男がパラシュート男…一説にはこの後自殺したとか、今も元気でコンピュータ技師の会社社長をしているとか…色んな説がある
アクシデントのせいで番組は延長に…
俺はこの休憩でボウのスタミナが復活すれば、目一杯飛ばしてやっとペースを掴んだホリフィールドがピンチだと思った。
しかし、試合再開後も中断前と変化はなく、ホリフィールドが判定勝ちした。
リアルディールの返り咲きだ!
何故清銀拳闘研がこの試合をNo1に選んだか?だが、その理由はホリフィールドの戦う「勇気」だ。
結局身体の力ではホリフィールドはボウに勝てない。
ホリフィールドVSルイス戦などその典型だけど、圧倒的にボクシングでルイスを追いつめていたホリフィールドだったが、ルイスがやけくそで放ったラッキーパンチ一発で試合が決まってしまった。
それは身体の小さなホリフィールドの限界でもあり、ヘビー級という体重差が幾らあっても構わないという無差別級ならではの、パンチ力は体重に比例するという物理的限界でもあった。
しかし、この第二戦はボウ圧倒的有利な中、ホリフィールドが不可能に挑戦した勇気で奇跡を起こした。
決して諦めない男の「本物の証明」だったのだ。