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録音におけるアイデア [音楽]

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今回はただ今MLのレコーディング中ということで「俺はこう考えながら録音している」というのを、具体的に書いてみる。

俺なんかの事を書いても仕方がないんだけど、そこは個人ブログということでカンベンして貰いたい。
本当は文字だけでなく、もっと音声などを使って実践的な事を紹介できれば、そんなモノでも何かの参考にはなると思うが、とりあえず今回は文字で書ける範囲でやってみる。

今回は「ギター録音」と「もう一工夫」について少し書いてみる。

まず、録音スタジオも様々だけど、こういう場所では最低限エンジニアがいて入力する演奏の出来不出来をジャッジしてくれる。
つまり他人が録音の出来不出来をジャッジしてくれるんだけど、これが自宅で1人でやるとなれば自分がOKかNGを決めることになる。

俺の場合、OKの基準は自分が納得できるか?が基準でやっている。

俺のギターを俺は「ガラが悪い」と表現しているが、それが録音だからと「大人しく」クリックの打点に合わせて「置きに行っている」様なショッパイギターなら、幾ら譜面通りに弾けていてもNGとする。
失敗してやり直すのは面倒だけど、ここは時間を掛ける箇所だと思う。

俺の場合、まず簡単なトラックシートを作り、どの箇所にどんな音のギターを入れるかを書き込んで、その音を作る。
アンプの音が出来れば、トラックシートに沿って順番にギターを入れていく。
上手くいけば、その時のアンプの状態をメモリしておくと、後でやり直しが効くので便利だと思う。
俺の場合、基本的な音をまず作る…「歪み系」とか「リード系」を作ってデジタルアンプのメモリに書き込む。
後は、それぞれの音のチャンネルを呼び出して、「この部分はもう少し歪ませよう」とか変えている。

音を余り決め込まないで、「大体コンナ感じ」の状態で録音し、後でパソコン内で微調整出来る範囲にするのが良いと思うが、歪みのモードだけはパソコンのプラグインを使うと全く異質な歪みに変わってしまうので、俺は使わないから歪みには拘る。

俺は「ガラの悪い音」しか語れないが…とにかく自分らしいギターを弾くことにプライドを持つことが基本だと思う…でないと録音全体が「どうもスミマセン」みたいな方向に行ってしまう。
そこは、胸を張ってギターで主張しなければ音源を作る意味も無くなる…「こんなので申し訳ないです」ってギターなら、そういう前にもっと練習とか準備とかをしてから録音に入るのが順番だと思う。
それを強引にやると、大抵の場合その時のストレスが原因でメンバーチェンジとなる。

「ガラの悪い音」の主成分は、長年弾いてきた俺の指だと思っている。
「バッキングだから」と、「歌のバックだから」と、「録音だから」と、大人しく淡々と弾くのでは無く、ダイナミックに弾こうと心がけている…その結果、なんだかガラが悪くなる。
本当はお上品でオシャレなギターも弾きたいんだけど、もう指の奴がそう出来てしまっているので無理なんだ。

具体的にはバッキングのコードでも複弦ビブラートを掛けるし、無神経にピッキング・ハーモニクスを多用する。
「充分太い」と判断すれば複弦に拘らないで、単音で弾くことも多い。

でも今回録音している曲は、曲自体が元気な曲なので、敢えて非力なシングルコイルのギターで極力上品に大人しく弾いてみた。

とにかく「録音は楽しいこと」だと自分に言い聞かせて、極力楽しむ事を勧める。

次に、今回録音している曲についても少し語ってみたい。

MLで今録音しているのは「In This Fight」という曲。
このブログにもyoutubeのリンクを貼り付けているから、ご存じだと思う。

俺はこの曲を作っているときから「ボツになるやろなぁ〜」って漠然と思っていた。
すると、この曲を一度も演奏することなくドラムにメンバーチェンジがあった…「ああ…勘が当たった」と諦めた。

でも、一度も演奏すること無く捨て曲になるのは納得がいかないので、新加入ドラムのカニちゃんには申し訳なかったが「とりあえず演奏してみたい」と主張した。
というのも、カニちゃん加入で俺は少し音楽性を「過去に戻す」考えをメンバーに話していたので、この曲はその話と逆行するタイプの曲だったから、気を遣ったんだ。

また、曲を作って、その曲を演奏することなくメンバーが替わるとボツになるというのが、それまでの俺のジンクスだった…俺のキャリアにはそんな不遇の曲が相当数あると思う。
つまり、新メンバー加入のアレコレで新曲どころでは無くなり、気が付いたときには新鮮みが無くなっているのが原因だと思う。
曲投入にはタイミングというのがあるから、新結成のバンドならいざ知らず、20年以上活動しているバンドがメンバーチェンジの直後にやるのは新曲制作では無いよね。

で、この「In This Fight」という曲は、ライブを想定して作った曲。
というのも、MLの曲はどれも長いから曲数が少ないし、複雑な展開の曲が多いので、パッと聴いて取っつきにくい。
やはりロックバンドなんだから、そういうのばかりで無く、ライブで始めて聴いてもサッと理解できて楽しめる曲が欲しかった…つまり短くて解りやすい曲。

この条件を満たすには、様々な方法があると思う…例えばバラードをやるとかね。
でも、ライブでの盛り上げも考慮して、敢えてストレートでシンプルなロックを作ってみた。

そういう考えが出来るのも、ボーカリストのねぇやんが、パワーで押せる「ロックボーカリスト」だから。
つまりロック風のパッケージに包んで変化球を投げなくても、パワフルな直球でグイグイ押せる…作曲者としてはこれを活かさない手はない。
だから、その辺りを強調するために、余計な装飾を外してシンプルにした。

それと、この曲は俺のルーツをダイレクトに反映させた曲だと思っている。
昔俺がバンドでライブハウスで演奏し出した頃の雰囲気を出そうと思って作ってみたんだ。

メンバーチェンジに巻き込まれ、理不尽に出だしから躓いた可哀想な曲だったけど、自画自賛で申し訳ないが俺はこの曲を凄く気に入っている。

で、ここからが本題だけど、シンプルな曲とは「簡単」を意味しているのでは無いと思う。

曲を複雑にしたから「良い」ってわけでもないと思う。
無味無臭の指を折って音符の数を数えなきゃならないフレーズを、生理的に嫌がる脳に無理に「暗記」させるような曲なんて、作ろうと思えばシーケンサーさえあれば誰にでも出来る…適当にパズルみたいに打ち込めば良いだけで、バンドとしてはその難解パズルを覚えて演奏することが価値観となる。
この手の「覚えるのに苦労する」という、演奏家もお客さんも「誰も得しない」パターンは、俺は大嫌いなので作らない。
俺の曲に同じように聞こえるピースがあったとしても、俺の場合それには意味があり、曲中に必要不可欠なメロディーだと思っている。

また、難解モノはライブで苦労する。
「わぁ!良く覚えたな…凄いな!」と驚いたり感心はされるが、パッケージの壁面がデカ過ぎると曲の中にまでナカナカ到達出来ないし、理解できないとお客さんがノルどころでは無いから、結果その手のライブはステージから客席への一方通行なクラシックの発表会みたいな雰囲気になる。

で、それじゃ「ロックバンド」としてはシンドイ…俺なんかはロックは楽しめるモノだと理解している。
ま、これ系の話は俺自身過去に徹底的にそういう難解モードにのめり込んだ時期があって…馬鹿な俺でも今はそう思うようになった。

もうテクニカルな大作は作らないと言っているのでは無い。
俺なんかでも「これは芸術だ」と思えれば、例え少し曲が難しくなってもチャレンジしようと思うが、いずれにせよ一枚のアルバムや一回のライブの中での比率になるだろうね。

で、シンプルな曲は逆に中身が丸見えなので、これはこれでメチャ難しい。
例えれば「小説」と「俳句」のどちらが難しいかと比較するのと同じで、どちらも難しい。

「In This Fight」のギタートラックを弾き終えて、「さて、入れなきゃいけないのは全て入れ終わったが…どうしたもんか?」となった。
というのも、そのままでは生真面目にストレートなロックの録音で終わってしまう。

これはどのバンドのメンバーでも同じ事を考えるんだろうけど、やはりそこはMLならではの「何か」をギターで表現しなきゃMLで俺がギターを弾いている意味がない。

この「何か」というアイデアを出すのが難しい。
こういうのは調味料みたいなモノで、無いと寂しいし、多すぎてもくどくなる。
さりげない「何か」…って何だ?

で、これが有料レコーディング・スタジオではナカナカ思い浮かばない。
「撤収まで後何時間しか無いから、そろそろ歌を入れないと…」とか、ケツカチを意識して気分的に追われてしまうので、ノンビリと「さて、何をどうする?」なんて状態になれない。

過去、MLの他レーベルでの作品は全てレコーディング・スタジオを「無制限」で使える事が条件だったので、ケツカチに終われる事はなかったが、そういう環境でも与えられない限り現場で思いつくのは精神的に難しいと思う。
だから、今現在誰に憚ることなく没頭できる俺の自宅スタジオという環境は、機材はメチャボロだけど俺には必要なものなんだ。

ヒントは直感と遊び心だと、俺なんかは思っている。
逆に、生真面目に考えれば考えるほど、「調味料」から遠ざかる。
一慨には言えないけど、馬鹿馬鹿しい事でも机上の空論で終わらずに試してみるというチャレンジ精神が功を奏する場合が多い。

この曲での「俺らしさの何か」…思案した結果、今回は部分的にギターの多重録音に凝ってみることにした。
やはりそれが最も俺らしいし、最近はそういうスタイルから遠のいていたので俺も新鮮な気分で取り組めるしね。
ガラの悪い馬鹿ギターの中から、時々飛び出る綺麗なハーモニーのコントラスト…悪くないと思う。

と言うことで、久しぶりにギター・オーケストラに挑戦なのだ。