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録音前 [バンド関係]

録音に固定観念は悪[カラオケ]今日はMLの録音前最後のリハだった。

バンドによっても違うし、ジャンルによっても違うだろうが、MLはこの段階で「何を入れるか」具体的な事を決める。
あまり前に決めてしまうと、その決めごとが想像力を縛ってしまう。

前回のテンポの問題に続き、より具体的に何を録音するか?を話し合う。
特に複数のトラックを使う録音は、ライブ演奏とは別物と考えるので、重ねて入れていくモノを具体的に検討する。
というのも、現場で「何かある?」では、それを捻出するだけで日が暮れてしまう可能性がある。

例えばSEを入れるとして、それは何か?を考える…大抵の場合は歌詞から連想する。
俺は歌詞を書かないので、歌詞を書いているねぇやんに聞いたりする。
SEも、ナントナクバックで鳴っているってだけなら、邪魔なのでブッチャケ入れない方が良い。
だから意外に後々印象に残るのは、入れるときには「それってイカガナモノカ?」という少し見当外れな常識外の音の方が良かったりする。
でも、これが難しい。
雨の歌詞で単純に雨の音を入れれば良いってわけではない。

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録音は何度やっても難しい

昔…「悲劇の泉」でSEを入れようとなり「泉の音」を考えた。
実際「泉」の音は難しかった…「泉って何よ?」から始まった。

「とりあえず水だよね」という事で、ライブラリーを当たったが…コレというのが出てこない。
片っ端から試した…最後はダメと判っていても「ザッパーン!」みたいな、日本海の荒海で波が砕ける音まで試した…なんか演歌の世界になった…深夜のスタジオで睡魔と疲労でグズグズになりながら永遠に「ピチョン」とか「ザッパーン!」を試して聴くのが、俺にとっての「録音」だった気がする…そこで「そろそろ始発電車が動く時間だな」とか、胆略的に挫けてはダメなんだ、そのまま昼までやらなきゃダメ。

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昔は録音が始まるとスタジオに住んでいた

俺なんかの経験では、こういう「泉は水」みたいな場合固定観念が邪魔をしていたと思う。
しかし、ナカナカ人間は固定観念から脱却できないから難しい。

録音に関しての準備としては、今のメンバーはベテラン揃いなのでイチイチど真ん中の基本は確認しないが、慣れていないメンバーが相手だとトラックシートを書いて確認する事もあった。
ここで手を抜いて「行き当たりばったりの出たトコ」で録音していくと「抜け」があったり「重複」があったりで混乱する…大抵の場合抜ける。
一番のAメロのバックで鳴っていたギターが二番のAメロでは鳴ってないとかね。
だから、判っていてもトラックシートは必要。

また、録音の前の段階で試すのはそれが何だろうが良いこと。
せっかくメンバーが揃っているリハでは、どんな些細な事でも思いつけば即試す。
バンドとしては試すという創造を躊躇させる雰囲気だけは作ってはいけない。

ナカナカ録音が近づいてくるとアレコレと変更は増やしたくないものだが、俺は先頭切ってアイデアを出し問い掛けて他のメンバーが言いやすい空気を作る。
「誰の意見が通るか」という力関係や政治力などのクダラナイ駆け引きではなく、皆で作品を作るという空気が出来れば結果的に俺なんかのアイデアが通らなくても構わないと考えている。

俺は実際の録音段階で、ギターを複数試そうと考えている。
切れが得られなければシングルコイルのギターも試そうと思っている。
そうなれば、事前にギターのメンテナンスも必要で、録音前はアレコレ忙しい。

録音直前の申し合わせで、最低限確認するのは「録音時」に必要な案件と、「TDの時点で行う処理」を明確にすることだと思う。

具体的に「後処理」で編集する最も重要なのは「音量バランス」と「距離感」だと思う。

他のジャンルの知識は無いが、ロックの場合は基本的にはマイクの距離は短くする。
例外は、音数が少ない場合で、70年代の作品の様に24トラック程度の規模だと特にマイクの距離は関係無い。

マイクを、例えばギターの場合スピーカーに近づける事を「オン」と呼び、話す事を「オフ」と言う。
しかしMLの様な100チャンネルで足りない場合、全ての音を「オン」で録り、後処理で距離を付ける。
そうしなければ、「オフで録音した距離」は後処理で短くできない…TDで距離が遠いことが判っても後の祭りだ。

「遠くでか細く鳴っている」というのを表現するには「マイクを離して小さな音で演奏」…では無く「オンでハッキリ弾いた音」をTDで「レベルを下げ、ディレイやリバーブで距離を作る」のが正しい。
繰り返すが、ヴァンヘイレンのファーストの様に、ベースとギター各1トラックみたいなのはオフで録音しても他に音の吸い会いになるぶつかる音が存在しないので、なんだろうが聞こえる。

例えば使うマイクも、ポップスみたいなボーカルが前に出るスタイルならよく放送局で見かける様なコンデンサーマイクを使うが、パワフルな歌を迫力を出して録音するなら、ダイナミックを使うしそれ以外にTDでもアレコレ手を加える。
TDが難しいのは、この方法に「これはこうする」という確立された方法がないことだと思う。
つまり、シーケンサーの演奏では無く、1つ1つが手作りの試行錯誤の結果という事になる。

ここで重要な事は、長い間俺なんかも録音を数限りなくやってきたが…一言で言えば録音する側の真心だと思う。

1つ1つの音に気を入れて録音する…最後はこれしかないのだ。