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MAGE LICHという曲 [バンド関係]

長く様々なバンドに加入してきたので、多くのボーカリストと一緒にやってきた[カラオケ]

 

今回は俺と組んで来たボーカリスト達とある曲にまつわるお話。

高校一年の時、同じクラスに外タレのロックが好きなSが居て、別にボーカル希望でも歌いたいわけでもないのに、強引に誘ってスタジオに入った。
ドラムは高校に入学して初めてスティックを握った奴、ベースは中学からやっていた坊主頭の野球部員、ギターがもう1人居て…我が儘な奴で屁理屈の多いひねくれ者だった。
でも、当時はスタジオに入るってだけで大イベントだった。
居酒屋で大騒ぎするのと変わらないテンションで、騒いでいた…ま、高校生バンドなんて何処も同じだ。
特に目標も無く、ただ楽器を持って事前に打ち合わせた曲を演奏するだけだった…演奏も途中でストップしたり、酷いモンだった。
そういうのは数回顔を合わせて頓挫というか、自然消滅…仕切るリーダーも居ないから、バンドと呼べる代物でも無く、格好良く言えばセッション大会なんだろうけど…。
そんな事が切っ掛けで更に親しくなった級友のSとは、その後3年間休みの日にはお互いの家を行き来する程親しくなった…お互いの家が遠すぎるのが難点で、夏場に原チャリで彼の家に遊びに行くときは高校生の俺でもキツかった。

初めて定期的にリハを行うバンドらしきモノを結成した時、ボーカルは単に歌うのが好きな声のでかい男だった。
クィーンが好きなんだけど、当然歌えるはずも無く…当時皆が「やりたくて」「知っている曲」で演奏可能となると数曲に限られ、それは彼が歌えるレベルとは別次元の問題だったから、そりゃ酷いモンだった。
メンバーの好きな音楽性もバラバラ…というか、奈良では好きな音楽性を言い出せばメンバーなんて集まらない。
問われるのは「楽器が演奏できるか?」だけだったと思う。
でも、皆良い奴らでライブなどの予定が無くても定期的にスタジオに入っていた。
驚くことに、高校を卒業した後も彼らとの関係は続き、全員が揃わなくても何となく楽器を持ち寄ってそれぞれの家やスタジオに入ったりしていて、それは俺が東京に移住する前まで続いた…こういうのをバンド仲間って言うんだろうね。

俺が大阪で本格的なバンドを結成する前は、大体はこんな感じで、ライブと言えば文化祭を目指すとか、イベントやコンテストに出る程度だった。
しかし、今思い返せばそんな劣悪な環境でも、結構様々な奴とやっていた。
今でもそこにあると思うんだけど、バイト先だった大和郡山の大手スーパーは、当時は俺みたいなバンドをやっている高校生バイトのたまり場だったんだけど、そこに「今度歌える奴が入ってきた」なんて情報は意外に多かった。
今みたいにコンビニなんて無い時代だから、何も産業らしいモノが無い奈良県で高校生がバイトするなら、スーパーの倉庫での商品管理か、ファミレスの皿洗い、ガソリンスタンドと相場は決まっていた。

ある日、スーパー裏手の商品搬入口の影でタバコを吸ってサボっていると、仲間が「横ちゃん!マキOZ歌える奴が入ってきたで!」と教えに来てくれた。
早速仕事放ったらかして会いに行くと、俺なんかが通っていた高校より偏差値の高い学校の男が立っていた。
早速、男がマキを歌えるんだから「じぶん、ハイトーンなんやて?」と声を掛けた。
大人しい奴で、余り話しが続かなかったけど奈良訛りの上品な言葉使いだった。
半ば強引にとりあえずスタジオに入る事が決まった。

当時大好きだった「カルメンマキ&OZ」をやるという話しになったので、俺は知っている人脈の中から考え得る最高級のメンバーを揃えた。
ワクワクしながら、スタジオの日が数日に迫ったある日、上品なエリート君は用事が出来たとスタジオ入りをキャンセルしたいと言い出した。
押さえたスタジオは使わなくてもキャンセル料が取られる期間に突入していたから、これは厄介な事になったなと思った…というのもエリート君は用事があるのでは無く、知らない連中とスタジオに入るのに腰が引けていると顔にかいてあった。
当時は皆貧乏だったからキャンセル料金は痛いし、俺は俺の信用で他のパートの仲間に集まって貰うのに肝心のボーカルが居ないとなると合わせる顔が無かった。

すると事情を知ったスーパーのバイト仲間が、自分たちには無関係なのにエリート君を強引にスタジオに行くよう説得してくれた…ってか、俺はエリートが鬱病みたいになった時点で彼に興味を無くしていたから、スタジオに入る入らないはどうでも良かったんだけど…。
スタジオ当日、エリートはそれまでの暗さが見違えるほど明るくやってきて、演奏が始まった。
しかし、エリートは顔を真っ赤にして歌っているんだけど、全く声が聞こえない…マイクのケーブルが外れているんじゃないか?と思ったが、マイクの音を上げすぎてピーピーハウリングが起きているので、それは無い。
曲が終わる度に、エリートは音を下げて貰えますか?と言い続け、結果俺達の出音がフォークソングみたいになってもエリートの声が聞こえることはなかった…「それはマキOZが歌えるでは無く、知っている」って事だったんだろう。

他にも本気で想い出そうとすれば、この手のエピソードは腐るほどあるが、俺の奈良時代は大凡こんなもんだった。

大阪でバンドを結成した当初は、トリオ編成で、俺と、同じく奈良県人で、近所のフォーク仲間だったベースの久保が交互にボーカルを兼任した。
そんな時、イアン・ギランタイプですと名乗って吉田という男がやってきた。
当時のバンドは大音量で演奏していたが、吉田の声は嫌と言うほど良く聞こえた…最初の本格的に歌えるボーカルだった!
それまでは、アメリカ村の小さなライブハウスで演る程度だったのが、歌えるボーカリストの加入で、俺達はライブを積極的にやろうと様々なライブハウスに出かけた。
ギターとエフェクターを入れたカバンを持ち、電車で遠くにも出かけた。
店長と店員以外に客が5人とか、そんなのはザラだったが、人前でステージの上で演奏出来るのが楽しかった。

それから、数え切れないボーカリストと出会い…俺は東京に移住した。

東京移住直後にMargeLitchを結成し、最初に参加したボーカリスト通称”姫”こと吉本ゆきこはタレントさんで某大手事務所所属のボイストレーニングを積んだ現役女子大生だった。

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ML初代ボーカルの姫

もうこの頃のMLを知る人は居ないだろうから、少し紹介すると、偶然だけど姫の声は今現在MLの看板を勤める月本”ねぇやん”美香に凄く似ている。
当時の演奏を「ねぇやんが歌とてるんやで」と聴かせても、信じる奴もいるだろう程似ている。

姫は在籍期間ではMLを直ぐに辞めた感があるが、バンド結成〜ライブがこなせる曲を全曲ストックするまで在籍したので、情報量としては凄く多かった。
ガンバリ屋で、バンドの看板を背負って立つ気構えは業界で鍛えられたプロだったが、何か俺がそれまで大阪で飲んできた水とは違う違和感があった。
過去の失敗を「タラ・レバ」でシュミレーション出来るが、この時期姫とその後もどうすれば上手くやれたか?は未だに思いつかない。

姫脱退の後、トリオ編成で俺が歌を兼任し、世良純子が加入。

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リハで歌うML加入直後の純ちゃん

この時期は多くを語らなくても、作品も多く残っているし、純子さんの素晴らしい歌の数々はご存じの方が多いだろう。

その後、関”タマ”聡子が加入し、現在のねぇやんはMLのボーカリストとしては5代目という事になる。

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ML4代目ボーカルのタマちゃん

姫が新宿の狭いスタジオで俺が次々作る新曲を歌っていたのが1986年…曲を歌い終わるとスタジオの隅でノートに書いた歌詞を書き換えたりしていたのを覚えている…当時バンドのリハは週3回だった。
そんな時、バンドのミーティングで「まず俺達のテーマソングを作ろう」と、作曲したのが「MAGE LICH」という曲だった。
スペルが違うと思われるだろうが、本来バンドのスペルもMAGE LICHだったが、その後次々とバンド内に原因不明の怪奇現象が勃発し…気味が悪くなったので「R」と「T」の文字を増やし単語として意味を成さないMargeLitchに変更した…驚くことに、変更した途端怪奇現象は起きなくなった。
MAGE LICHの意味は当時アメリカで流行っていたコンピュータ・ゲームに出てくるモンスターの名前。

曲の主題となるメロディーのアイデアは、数ヶ月前までやっていた大阪のDEARERというバンドのライブSEのメロディーの流用で、これはDEARERのキーボーディストのコウタロウの部屋で多重録音して楽しく作った。

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今は無き梅田キャンディーホールでのDEARER

姫が抜けて、俺がボーカルを取る様になり、「MAGE LICH」は演らなくなった…というか、一応デモテープに収録するために録音したけど、俺の歌では何かシックリ来なかった。

世良さんが加入して「MAGE LICH」は復活し、デモテープVol-4に収録した。
世良さん加入後最初の録音だったので、バンドは張り切って俺が使い慣れていた奈良のスタジオでバック演奏を録音し、歌パートを東京で入れた力作だった。
ヘトヘトになってバック演奏を関西で纏めて東京に戻り、歌録音のスタジオで「マージュリッチ」の完成したカラオケにまず最初に俺がマイクを持って、演歌調で歌うとそれを聴いた世良さんがイメージが壊れる!と怒ったっけ…。
しかし、MLの曲が増えた事で次第に「マージュリッチ」を演る事は無くなっていった。

1998年辺りにMLのワンマンライブで「ML対ML」というコーナーを企画し、MLオリジナルメンバーのKyoがゲストで出てくれて、やらなくなっていた昔の曲を、当時の編成で演奏した中に「マージュリッチ」が入っていた…確か初期MLのライブでやっていた「フロントメンバー全員の振り付け」付きで演奏した…懐かしかった。

時は流れ…歴史は繰り返すというか、数々のメンバーチェンジの結果、偶然MLは初期MLのテイストを感じさせるサウンドになった。
今のメンバーで「マージュリッチ」を復活させたいと、思った。

何か20年以上掛かってやっと1つの曲が完成するみたいな気がしたのだ。